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 国の登録有形文化財で、明治時代の小説家・歌人の樋口一葉が通ったことで知られる東京・本郷の旧伊勢屋質店を跡見学園女子大学が購入することになった。11日にも所有者と売買契約を結ぶ。維持・管理が困難になった所有者が土地建物を売りに出し、存続が危ぶまれていた。文京区が大学の購入費の一部を補助することで交渉がまとまった。

 区によると、補助額は売買総額の3分の1を超えない範囲。購入後30年は転売を禁止する条件などを付ける。大学と連携し、土日の公開事業も計画している。

 登録有形文化財の修理費は設計監理費以外に補助はないため、所有者が区に相談。昨年、観光を学ぶ学生の実習の場としての活用に関心を示した跡見学園女子大学と協議を始めたが、金額面などで交渉は決裂。一般に売りに出された。住民や区議会から保存を求める要望書が提出されたこともあり、区が大学の購入資金に補助金を上乗せする案を提示、所有者との間で再交渉を進めてきた。建物の修理の費用がかさみ、「個人で維持していくのは、もう限界」と売却に踏み切った所有者の永瀬智江子さんは「一番いい形でまとまり、保存することができてよかった」と話している。

 旧伊勢屋質店は1860年の創業で、店舗のあった「見世」と土蔵、座敷棟のいずれも明治時代の建築物が残る。1982年に質屋を廃業後は、年1回、一葉の命日の11月23日に内部が公開されてきた。三つの建物は、2003年に国の登録有形文化財になった。(上林格、藤井裕介)