夏目漱石「三四郎」 私と漱石 脳科学者の茂木健一郎さん
聞き手・中村真理子
「三四郎」の再連載を毎朝楽しんでいました。漱石は一番好きな日本の作家です。「三四郎」や「それから」はもう20回は読んだでしょうか。連載では新たな発見がありました。最後まで書き上げて何度も推敲(すいこう)したのならまだわかる。でも新聞連載は「取って出し」でしょう。それでこの完成度の高さ。奇跡としかいいようがない。
三四郎が東京で最初に訪ねるのが野々宮君の実験室。僕も東大理学部の物理学科で、まさに野々宮君の穴倉にいました。世間から隔絶され、浮世離れした感じは今も変わりません。光線の圧力の試験や、「吾輩は猫である」で語られる「首くくりの力学」は面白い。理系の気持ちがよく書けています。
「三四郎」は群像劇。三四郎…