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 女性の進出を阻む社会の隠れた意識について昨年来、シリーズ「女が生きる 男が生きる」で取り上げてきました。今年2月、「地方政治の壁」で全国の地方議会のうち、女性が1人もいない「女性ゼロ」議会が2割を超えている実態を伝えたところ、様々な意見が寄せられました。声をたどって再び取材しました。

「クオータ制特区」探る

 候補者や議席の一定数を女性に割り当てる「クオータ制」を地方議会に導入する。そんな活動をしている徳島県三好市の竹内義了市議(48)から、連載開始直後の2月末、取材班に「(記事を)活動につなげたい」と感想が届きました。

 三好市議会(定数22)は全員が男性の「女性ゼロ」議会。昨年初当選した元市職員の竹内さんには「少子化や介護を男ばかりで語っている」ことに違和感がありました。女性議員を増やすため、海外ではクオータ制を採り入れていることを知り、実現したいと昨年秋から活動してきました。

 竹内さんは、国から「特区」の指定を受けてクオータ制を実現したいと考えています。市議会から国へ請願を出そうと準備しています。そんな特区は例がありません。「簡単ではないが、活動を通じて女性議員を増やそうという雰囲気が盛り上がれば」と言います。

 地方議会の女性の少なさをめぐって、ほかにも意見が届きました。

 群馬県に住む50代の女性は「おじさんとおじいさんばかりの議会は不安」とメールをくれました。地元の市議会に女性は1人。産業振興をうたい道路や照明が整備されても高齢化は進み、都市部へ引っ越す人も多く、空き家が増えます。「ハードだけでなくソフト面の投資も大事にした、将来性のある政策が必要。しがらみがなく、生活の視点をもった女性議員がもっとたくさんいたら、違う町おこしになると思う」

 一方で、女性の意識にも疑問があると言います。市政モニターや市長との懇談会に出向いても、60~80代の男性しかいません。周りの女性と世間話はしても、市政やニュースは話題にのぼりません。「女の人自身、政治に興味がないのかな」と感じています。

 大学教員だった静岡市の安藤勝志さん(72)からは「クオータや制限連記制など選挙制度の改革だけでは限界があるのではないか」というメールが届きました。制限連記制は有権者が1選挙区で複数の候補に投票できる制度です。選挙制度の改革で女性議員の割合が増えても、特定の業界や団体の代弁者、仕事をリタイアした高齢者ばかりになるのでは代わり映えしないと安藤さんは考えます。

 子育て世代の女性や若者が政治にかかわれるよう、「職業を持ちながら活動できる形にするべきだ。議会を土日や夜に開いたり、保育設備を検討したりしては」と提案しました。(高重治香、山崎啓介)

産休は当然?議員は別?

 西日本の30代の女性市議が自身の産休体験をメールで寄せてくれたので、訪ねてみました。

 長男が3歳の時に初当選。翌年夏に、所属する市議会で初めて、任期中に次男を出産しました。議会の規則に産休の定めはなく、明記された欠席理由は「事故」のみ。「議員が産休を取って本当にいいのか」と悩んだと言います。

 そんな時、先輩の女性議員が「若い女性議員が結婚して出産できる基盤づくりになる」と背中を押してくれました。「育児と母子の健康維持のため」と記した欠席届を議長に提出。定例議会を2回休みました。

 産休中、子連れで外出すると「いつ仕事に復帰するの?」と市民から何度も聞かれ、「議会に出ないのに給料もらえていいね」と陰口を言う女性議員もいたそうです。復帰後は「少子高齢化だから、3人は産まなあかんよ」とよく言われます。3人目を欲しいと思う時もありますが、産休中のプレッシャーを思うと、とても踏み切れません。

 沖縄県粟国村の嘱託職員、波多野雅子さん(27)は、多くの地方議会に産休制度がなく、出産を理由にした欠席が「事故」扱いされてきたことについて、「なぜ子どもを授かることが事故扱いになるのか。奇跡のような出来事をそんな風に扱うのはとても悲しいし、悔しい」とメールに記しました。

 連載では、産休をとった新宿区議が「投票した人々に対する裏切り」と非難されたことも取り上げました。横浜市の主婦、ヴェッツェル吉田優子さん(35)は「政府は『女性が輝く社会』を推進しているのに、これが日本の体質なのでしょうか。社会の意識も変える必要がある」と話します。

 一方、産休を取った大阪市議が「給料泥棒」と批判されたことについて、神奈川県の60代男性は「仕事をしていない期間は給料が出ないのが当たり前」と指摘します。「選挙で選ばれる以上、普通の仕事とは違う意識が必要だ。妊娠や出産は適齢期があり、その期間にあえて議員になるからには、それなりの覚悟を持って欲しい」

 では、産休中だけ報酬をもらわない選択はできるのか。議員報酬の返上は公職選挙法が禁じる「選挙区内の者への寄付」にあたるため、自治体側は受け取れないのが実態です。(伊東和貴)

連載「地方政治の壁」

 2月23日から3回連載した「地方政治の壁」では、地方議会に女性議員が少ない理由や増やす方法、増えることによって何が変わるのかを探りました。

 1月1日時点で、全国の地方議会1788のうち、女性が1人もいない議会が379あることがわかりました。各地の女性ゼロ議会を訪ね、「女は家」という意識などが女性の立候補を阻んでいる実態を報告しました。女性議員が過半数を占める議会で、政治の透明性が高まったと評価されたことも紹介しました。

 議員になった女性が直面する壁もあります。任期中に産休を取って批判された女性議員の体験を取り上げ、産休制度のある地方議会が一部にとどまることを報告しました。

 女性の地方議員を増やす方策として、有権者が1選挙区で複数の候補に投票できる「制限連記制」があることなどを紹介しました。

「女性は政治に無関心」は本当か

〈三浦まり・上智大学教授(政治学)〉 女性議員の少なさをメディアが大きく取り上げ、注目を浴びるのは良いことだと思います。日本ではまだ、女性だけが直面している構造的な障壁への認識が足りません。性別によるクオータの議論をすると、「男も女も違いはないのになんで女性だけ」「逆差別だ」と言われてしまうのは、そのせいです。

 女性と政治を巡り、「女の人は政治に関心がない」と言われることがよくあります。本当にそうでしょうか? いまの男性中心の議会や永田町が形づくる「政治」には関心が持てないかもしれない。でも子育てや教育、福祉、生活に関わるすべての問題が政治につながっています。「政治」の概念を広げれば、女性には女性の「政治」への関心が必ずあると思います。

 「数だけ増えてもしょうがない」という言い方もよくされます。たしかに、女性なら誰でもいいわけではありません。でも、9割も男性が占める必要はあるのでしょうか? たとえば7割もいたら男性の声は十分に聞き入れられるのでは。男性議員はより厳選され、議会はより多様になりますから、このほうが有権者にとって良い話だと思います。(聞き手・岡林佐和)

「女は家」議員の意識は

 連載を読んだ奥村昌子・北海道情報大学准教授(40)は、議員の性意識に関する調査について知らせてくれました。2007~08年、研究リーダーの玉城英彦・北海道大学特任教授らと共に、道議と道内の市町村議にアンケートを実施。結果はグラフの通りです。奥村さんと、共同研究者の後藤ゆり・札幌国際大学准教授(50)、新井明日奈・北大大学院助教(40)の説明によると、男性議員でも「女は家」といった意識にとらわれない人の方が、青少年の医療福祉や健康について議会で質問する機会が多いことも分かったそうです。

     ◇

 女性ゼロ議会のまちを訪ねたとき、「そういえばいないね。考えたこともなかった」と有権者がつぶやいたのが印象に残っています。日本の女性議員の少なさは世界でも際だっています。関心の低さの裏返しとも思えます。連載にお便りをくれた読者から「関心は持っているけど、友人や同僚と政治の話を気軽にできない雰囲気がある」と聞きました。折しも統一地方選。「女性議員の少なさ」を語ることから、いまの政治を考えることを始められればと感じます。(岡林佐和)

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