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 春は出会いの季節。だが新しい世界で待っているのは喜びだけではない。解剖学者の養老孟司さん(77)は、100年前を生きた夏目漱石の苦悩を通して、現代社会を見つめる。

 『吾輩は猫である』と『三四郎』が特に好きで、漱石は若い頃から読み返してきました。彼は49歳で死にます。なぜ胃潰瘍(いかいよう)に苦しんだのか。漱石の中で西洋文明の個の感覚と、江戸以来の日本の文化がぶつかり、抜け道がなくなったのだと思う。漱石が悩んだ問題は、現代の日本社会にそのまま重なります。

個性は伸ばせない

 冨山和彦『なぜローカル経済から日本は甦(よみがえ)るのか』を読むと、グローバルの世界とローカルの世界では論理がまったく違うと言っています。僕の生き方はローカルだった。科学者は英語で論文を書き、海外の科学誌に発表する、完全なグローバル基準。しかし僕はあるときからそれをやめた。日本語しか書かない。論文の形式をとらない。土俗に徹したら『バカの壁』シリーズは600万部を超えました。英語で書いても売れませんよ。

 西洋風に教え込まれて、いまは世界中で個性を伸ばせという。自分探しという言葉を聞くたびに、探しているおまえは誰なんだよ、と疑問を呈するのですが。個性は伸びるものではありません。認めるしかしょうがない。血液型が生まれながらに決まっていて伸びないようにね。

 西洋と日本は言葉の作りから違う。「行ってくるよ」と声をかけて「だれが?」なんて聞く女房はいませんよ。日本語には主語がなくてもよい。「私」がないから責任者もいません。書類の決裁で課長、部長と順繰りに判子を押していくでしょう。僕にはあれが「ここに判子を押した人はこの件について一切の責任を持ちません」と言っているように見える。

■日本にはな…

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