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 外務省は7日、2015年版「外交青書」を公表した。戦後70年間の歩みを振り返る項目を冒頭に設け、「先の大戦の深い反省」を明記した。一方で、日本が戦後に行った国際貢献を強調し、安倍政権の「積極的平和主義」を前面に打ち出した。

 青書では、戦後70年を振り返る項目で、「(日本が)平和国家として歩んできた原点は、先の大戦の深い反省を踏まえた不戦・平和の誓いにある」と指摘した。そのうえで、「世界の平和と安定及び繁栄にこれまで以上に積極的に貢献していく」と強調。政府の途上国援助(ODA)による支援や、国連平和維持活動(PKO)などの取り組みを写真入りで紹介した。

 ただ、戦後50年の「村山談話」や同60年の「小泉談話」にある「多大の損害と苦痛を与えた」「心からのお詫(わ)び」との表現は盛り込まなかった。

 村山、小泉談話が出された翌年の96、06年版の青書には、こうした表現が入っている。外務省は、96、06年版の記述は、前年の談話を踏まえたものだと説明。「今年の談話はこれから出される。(同様の記述が16年版に載るかは)そこでどういうものが出るかに関係している」という。

 日韓関係では、04年版以降使われてきた「基本的価値を共有」するという表現がなくなり、「最も重要な隣国」とするにとどめた。今年が国交正常化50年の節目であることから「未来志向で重層的な関係を、双方の努力により構築していくことが重要」とも指摘。竹島については「日韓間には領有権をめぐる問題があるが、歴史的にも国際法上も明らかに日本固有の領土」と明記した。

 慰安婦問題では、昨年、政府が河野談話の作成過程を検証したことを紹介。朝日新聞が故吉田清治氏の証言記事を取り消したことを念頭に「日本の大手新聞社が慰安婦問題に関する過去の一部の記事を取り消した」などと書いた。

 日中関係では、昨年11月に約2年6カ月ぶりに実現した首脳会談が「『戦略的互恵関係』の原点に戻り、関係を改善させていくための第一歩となった」と評価し、両国を「切っても切れない関係」と位置付けた。一方で、その後も尖閣諸島周辺での中国公船の領海侵入が続いており、抗議していると明記。「尖閣諸島は歴史的にも国際法上も日本固有の領土」と指摘した。

 第1次安倍政権で日中首脳会談を行った後の青書は、両国の関係を「更に高度な次元に高める」などとしており、今回の青書は、会談後も両国の関係が改善の途上にあることをうかがわせた。

 対北朝鮮では、昨年3月に日朝協議が再開し、北朝鮮が拉致被害者らの調査を実施していると説明。「『対話と圧力』の方針の下、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決」するよう関係国と連携していると記した。

 青書は対外発信強化のため、9年ぶりに全文を英訳し、ホームページなどで公表する。(松井望美)

中韓、抗議や異論

 韓国外交省は7日、日本外務省の外交青書について報道官声明を発表し、「独島(トクト、竹島の韓国名)、慰安婦問題などに関して不当な主張を盛り込んだ」などと批判した。外交省の李相徳(イサンドク)・東北アジア局長は在韓国日本大使館の金杉憲治・総括公使を呼び、抗議した。

 報道官は記者会見で、外交青書の韓国に関する記述のうち、「基本的価値を共有」としてきた表現がなくなったことについて、「日本政府の表現の変更について評価したり、コメントしたりする事項はない」と説明した。そのうえで、「重要なことは、両国関係をどう表現するかよりは、両国関係を未来志向にするために歴史をいかに克服するか真剣に悩み、努力する姿勢だ」と述べた。

 中国外務省の華春瑩副報道局長は7日の定例会見で、外交青書について「釣魚島(尖閣諸島の中国名)は中国のもので、領土主権を守る中国の決心にはいかなる疑念も差し挟む余地がない」とする一方で、「我々は対話を通して適切に関連する問題を解決し、コントロールしていきたい」とも述べた。(ソウル=東岡徹、北京=林望)

尖閣・竹島資料、HPで公表

 政府は7日、尖閣諸島と竹島を日本が実効支配してきたことを示す沖縄、島根両県内の資料をまとめた報告書を、内閣官房領土・主権対策企画調整室のホームページ(HP)で公表した。昨年度、民間に委託して1500点あまりの資料を調査した。このうち100~200点については、内容や所在地を一覧にしたデータベースにして夏までにまとめる。

 両県内の郷土館や図書館が所蔵する資料、新聞記事などを調べ、尖閣諸島での漁業について記した明治中期の紀行文や、明治末期に島根県が発行した竹島周辺での漁業許可証などをまとめた。山谷えり子領土問題相は同日の記者会見で、「歴史的事実に基づいて冷静、論理的な発信を行うことが重要だ。こうした資料文献は従来の我が国の主張を裏付ける」と述べた。

 また、この日、外務省の関連団体の日本国際問題研究所のHP(英語版)に、竹島や尖閣諸島に関する論文の英訳4本が公表された。内閣官房領土・主権対策企画調整室の事業で、計8本の英訳公表を計画しており、残る4本も作業が終わり次第公表する。

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 〈外交青書〉 国際情勢や日本の外交活動についてまとめた文書で、他の省庁が出している「白書」にあたる。1957年以来、毎年発行されている。「青書」の名前の由来は表紙の色。初めて発行したときに参考にした英国議会外交委員会の報告書の表紙が青色だったため、日本も青表紙とした。