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 神戸市須磨区で1997年に起きた連続児童殺傷事件で、当時中学3年の少年を医療少年院送致にした神戸家裁の決定全文が「文芸春秋」5月号に掲載され、神戸家裁の岡原剛(たけし)所長は10日、「少年法で非公開とされている審判への信頼を損なうもの」との談話を発表した。

 決定全文は、97年に決定を出した元神戸家裁判事の井垣康弘弁護士(大阪弁護士会)から提供を受けた共同通信の編集委員が寄稿する形で掲載された。当時、神戸家裁が公表した要旨には含まれていない詳しい内容が盛り込まれている。

 家裁は10日、井垣弁護士と文芸春秋、共同通信の編集委員にそれぞれ抗議する申入書を送り、井垣弁護士については「裁判官が退職後も負う守秘義務に反する」と指摘した。

 井垣弁護士は朝日新聞の取材に対し、「提供した情報の中には個人の特定につながるようなものは含まれていない」と主張。「元少年の成育歴を知ることは、『事件を二度と起こさぬためにはどうすればいいか』を考えるきっかけにもなる」と述べた。

 一方、次男(当時11)を亡くした土師(はせ)守さん(59)は「この事件は経緯が特殊で、教訓になる部分は多くないと思う。遺族への配慮のない掲載で信じがたい。興味本位で読まれるのはつらい」と取材に語った。

 文芸春秋は「今日も続く重大な少年事件の原点ともいえる事件で、全貌(ぜんぼう)を知ることによって教訓が多いと考えた」とコメント。共同通信は、井垣弁護士が決定全文を明らかにしたという内容の記事を3月に配信したが、全文の内容は報じていないと説明している。編集委員が文芸春秋に寄稿した経緯については調査中だという。(青田貴光、阿部峻介)