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 何時(いつ)の間(ま)にか、人が絽(ろ)の羽織(はおり)を着て歩くようになった。二、三日、宅(うち)で調物(しらべもの)をして庭先より外(ほか)に眺めなかった代助(だいすけ)は、冬帽を被(かぶ)って表へ出て見て、急に暑さを感じた。自分もセルを脱がなければならないと思って、五、六町(ちょう)歩くうちに、袷(あわせ)を着た人に二人出逢(であ)った。そうかと思うと新らしい氷屋で書生が洋盃(コップ)を手にして、冷たそうなものを飲んでいた。代助はその時誠太郎(せいたろう)を思い出した。

 近頃代助は前よりも誠太郎が好きになった。外(ほか)の人間と話していると、人間の皮と話すようで歯痒(はがゆ)くってならなかった。けれども、顧みて自分を見ると、自分は人間中で、尤(もっと)も相手を歯痒がらせるように拵(こしら)えられていた。これも長年生存(せいそん)競争の因果(いんが)に曝(さら)された罰(ばち)かと思うと、余りありがたい心持はしなかった。

 この頃(ごろ)誠太郎はしきり…

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