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 オリンピックには「五輪」という便利な略称がある。けれど、もっと長い「パラリンピック」にはそれがない。2020年東京大会に携わる当事者たちも気の利いた略語がないか、頭を悩ませている。何か妙案はないものか。

 「選手の間でも長いという話になりますよ。五輪との併記ではたまにパラリンピックが省略されちゃう」。女子走り幅跳びでパラリンピック3大会に出場し、東京大会招致ではスピーチが話題になった佐藤真海さん(33)は語る。「公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会事務総長」の肩書を持つ武藤敏郎さん(72)は、「役職を短縮してもいいか」と、取材でよく尋ねられるという。

 政府は13年秋、五輪・パラリンピック担当相を支えるため、平田竹男内閣官房参与(55)を室長とするチームを設置。平田氏自ら、略称を「内閣オリパラ室」と発表した。「オリパラ」は最近、話し言葉として定着しつつあり、国会の論戦でも使われる。だが表記としては、浸透したとは言い難い。パラリンピックの語源「パラプレジア(下半身まひ)」を「パラ」と縮めるのは、「少し乱暴」と抵抗感を示す障害者もいる。

 そもそも「パラリンピック」という言葉はいつ、どうやって生まれたのか。

 日本パラリンピック委員会(JPC)の山脇康委員長は、「64年東京大会で、日本の発案から、初めてその名称が使われた」。

 誰が言い出したのかは不明だが、当時は出場者が車いす選手だけだったことから、「パラプレジア」と「オリンピック」を組み合わせた造語が出発点だった。大会はその後、視覚障害や脳性まひの選手も出場するようになり、「パラレル(もう一つの)」+「オリンピック」という新解釈も生まれた。85年には「パラリンピック」と名乗ることが、国際オリンピック委員会(IOC)で承認された。

 国立国語研究所の客員教授で、明治大教授の田中牧郎さん(日本語学)は「いい略語は人々の間に浸透していく」と話す。「それにしても、『五輪』は見事です」

 「五輪」を最初に考えたのは、元読売新聞記者の故・川本信正さんだ。40年夏季大会の東京招致を巡る取材をしていた36年、オリンピックを略せないかと、見出しをつける担当者から相談され、五大陸を表すマークと、宮本武蔵が著した「五輪書」から、ひらめいたという。

 朝日新聞五輪取材班も考えてみた。パラリンピックのシンボルが、「心技体」を表す三つのアイコンからなることから、「巴輪(ぱりん)」。アイコンが弓の形に似ていることから、「三弓(みきゅう)」。うーん……。

 では、表現のプロは、どう考えるのか。カンヌ国際広告祭で複数回受賞している松尾卓哉・クリエーティブディレクター(44)は、「パラノーベル賞やパラカンヌ広告祭はないのに、なぜスポーツは分けるのか。健常者も障害者も、同じ社会で生きている。両方『五輪』が理想だが、しいて言うなら『超五輪』と呼びたい」。ある大手広告会社のコピーライターは、「五輪から派生しているんだから、『派(パ)五輪』はどうか」。さて、みなさんは?(増田創至、原田亜紀夫)