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 国会議員の仕事は、昼だけではない。

 「遅くなりすみません」

 今年2月の午後8時すぎ、甲府市中心部の居酒屋に、自民党の宮川典子衆院議員(36)が走り込んだ。

 支持者の男性9人に「かわいいね」「ありがとうね」と迎えられ、ワイン片手に選挙の情勢を語る。1時間で切り上げ他の店へ。別の男性らと日本酒を酌み交わし、教育問題などを談議。午後10時、さらに1軒。終わった時、日付は変わっていた。当選2回の宮川氏に、飲み会回りは「支持を広げる貴重な機会」ではある。

 衆院で小選挙区制度が導入されたのが1994年。同じ政党の候補者が争い、「金がかかる」などの批判を受けた中選挙区制から政策本位をめざした。

 だが実態は。飲み会、冠婚葬祭、行事の参加――。

 有権者との対話は政治家の基本だ。アルコールが入って、胸襟を開き話せることもあるだろう。だが政策本位より、飲み会出席競争に傾いてみえる時がある。有権者は、そういった面ばかりで政治家を評価していないだろうか。両方の制度で選挙をした高市早苗総務相(54)は「得票率の目標が中選挙区と違う。(行事に)出るかどうかが、大きな影響を受ける」。

 夜の活動は、出産や育児との両立の問題を生む。ほかにも、セクハラの温床にもなる。複数の女性議員が「当選する前は、飲み会でセクハラされても文句は言えなかった」。少数派の女性というフィルターを通すと、政策本位と対極にある日本の政治土壌が見える。

 「飲み会文化」は有権者だけではない。

 「政治は夜動く」「料亭政治」という言葉がある。民主党の小宮山泰子氏(50)は先輩議員によく赤坂のクラブに連れて行かれた。党派を超え集まる議員と、グラス片手に政治の内幕や選挙の話。昼間の公式な場では知り得ない情報や本音が飛び交う。「政治の世界のコミュニケーションは夜」と知った。「相手の立ち位置や落としどころを探れる夜の場は、ポストにもつながる」とも感じた。

 食事をして親睦を深めるのはよくあることとはいえ、それも程度問題だ。「女性は男性のように夜遅くまで飲み歩けない」との声もあった。女性が自分1人ということが多かった小宮山氏には、飲み会が「男同士の結束を確認する場」と感じられて入りづらく、「私がいない方が楽しめるんじゃないか」と申し訳なく思ったこともあった。

「ガールズ」への視線

 3月上旬、中川郁子農林水産政務官(56)の「路上キス」写真が週刊誌に掲載された。相手は妻子がいる国会議員だが、話題はもっぱら独身の中川氏に。

 大臣が辞任した日。しかも「亡夫の後継」を強調し当選してこの行動、と批判された。本人に責められるべき点はもちろんある。

 マドンナ、ガールズ……。女性議員には、興味本位ともみえる視線が注がれる。自民の野田聖子氏(54)は「女性であることで軽く見られる。政策より顔や容姿で判断される」。

 「女性は風やブームで増えたり、減ったり。当選回数を重ねられないから発言力も実力もつかない」と民主の阿部知子氏(67)。

 もてはやし、そっぽを向くメディアに問題はある。が、「ブーム」の終焉(しゅうえん)と共に永田町から去った女性が少なくないのはなぜだろう。

 自民党の小池百合子氏(62)は共著書で、政治などで女性が活躍するため三つの改革が必要だとした。性別役割分担に関する世の中の「意識」、女性の活躍を支える「制度」、女性自身が意識を高め立ち上がるための「自己」改革だ。

 民主党の「小沢ガールズ」と呼ばれた太田和美氏(35)。06年、衆院補選で当選。小沢一郎氏と共に12年に離党。その後落選を重ね、引退も考えた。

 だが、東日本大震災の原発事故で相談にきた母親たちを忘れられなかった。維新に移り昨年の総選挙に出馬、比例復活した。「周囲の支えもあったが、自分自身に胆力もあったと思う」

「党に覚悟が必要」

 政治で女性を増やす「制度」の改革は、少しずつだが変化の兆しがある。

 小池氏は12年に党の特命委員会委員長として、女性候補が少ない政党への政党助成金を減らす改正法案を提案した。委員会の最高顧問には安倍晋三氏も。その後、安倍氏は首相に就いたが、提案はたなざらし。女性候補者を求めるポスター制作の検討も進んでいたが、結局は立ち消えに。

 小池氏は「党に意思と覚悟が必要。新人候補者は脅威だから、新しい候補者を擁立することを、現職は

嫌がる。経済界などに女性の登用を2020年に3割と言って、一番の足元でやっていないのはちょっと違うのではないか。政党なら、党のトップが決めればよいことだと思う」。

 女性議員を増やすために制度を改革した国は多い。100カ国超が、女性の候補者や議員の割合を定めるクオータ制度を導入済みだ。日本でも2月に「クオータ制」の導入を目指す議員連盟が発足、幹事長は野田聖子氏が就き、全政党から約50人の議員が参加する。

 女性議員にも慎重論はある。自民の牧島かれん氏(38)は「無理やり数字設定をして増やすことは望ましい姿ではない。本人のためにもならない」と話す。

夫が支える例、半数

 男性議員の場合、本人に代わり妻が地元などで活動するのは珍しくない。女性議員はどうだろう。

 自民党の稲田朋美政調会長(56)が初当選したのは05年。立候補の背中を押したのは、夫の「君は国会議員に向いている」という一言だった。前回衆院選では夫が仕事を休み、地元で来客対応や企業訪問などを手伝った。稲田氏は「夫がいなければ国会議員になっていなかった」と振り返る。

 野田聖子氏は、夫が家事や育児を担う。重い障害がある長男(4)がいるが「夫が私を支えてくれて、政治活動が成り立つ」。

 2人のように夫が女性を支える例は多数派ではない。「パートナーが自身の政治活動をサポートしているか」の問いには、既婚議員で「している」が12人、「していない」が12人で同数だった。

 「妻が選挙や地元の活動を支えている男性をうらやましいと思うか」には、「思う」が19人、「思わない」が21人でほぼ同じ。「妻の代理出席は重みがある」という声の一方、「男性が妻のために頭を下げてもプラスにならない」「自分の夫にやって欲しいとは思わない」と抵抗がある議員は少なくない。

生き残るハードル、はるかに高い

 中北浩爾・一橋大教授(政治学)の話 中選挙区制から小選挙区制に変わったことで、風やブームの影響を受けやすくなり、男性に比べて目新しさのある女性は勝ちやすい状況が生まれてきている。しかし、生き残るためのハードルは男性よりもはるかに高い。

 逆風が吹いても勝ち残れるように、飲み会や催しへの参加など地元での活動が必要不可欠だが、内助の功を得にくい女性は不利だ。

 政界は男性が戦う場所との意識が内面化し、家族、親戚の反対も受けやすい。家事や育児、介護の問題も妨げ要因になっているが、政党などのバックアップは十分ではない。

 クオータ制を導入するなどして、まずは人数を増やすことが重要だ。そうすれば、女性議員が直面する構造的な問題を解消する機運が必然的に高まるはずだ。また女性議員の能力も、お互いが切磋琢磨(せっさたくま)することで次第に高まっていくに違いない。

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