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 「子宮帰れ」「紅白豚合戦をみています」――。時折送られてくる母親からの爆笑メール、あなたも受け取った経験はあるのでは? 単なる誤変換から意味不明な文言、時には人生訓まで。ネット上にある名言が本になり、20万部を超えるヒット作になっている。「ネットでタダで読めるのに、金払って本買う人はいないだろ」と一度は没になった企画だったが、担当者が執念で出版した結果だ。

 扶桑社が出版している「おかんメール」シリーズ。昨年5月に第一弾が発売されてから、9月に第二弾、今年1月に第三弾と短期間で立て続けにリリースされ、累計20万部を超えるヒット作となっている。掲載されているのは母親から子どもあてに送られたとされるメールの数々だ。

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 「あれ買ってきてよ、猛反発枕!」

 「コカインランドリー行ってきます」

 「かつあげ はじめていい?」(カツ揚げ始めていい?)

 「あと5分位どつくよ」(あと5分ぐらいでつくよ)

 「降りた民の傘」(折りたたみの傘)

 「いまむかついています」(今向かっています)

 「びよよんに行きます」(美容院に行きます)

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 ちょっとした誤変換など、文字入力に慣れていない、もしくは送信する前に見返さない、といった「おかんらしさ」があふれる作品が並んでいる。

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 「帰りに発泡スチロール酒買ってきてね」

 「生き方を教えてくれ」(行き方を教えてくれ)

 「父さん、変える?」(父さん、帰ってる?)

 「元気ですか?お母さんは絶倫です」(お母さんは絶好調です)

 「今日は冷やかし中華です延び無い宇宙に」(冷やし中華です。伸びないうちに)

 「おまえたちはいいね、毎日がエブリデイで」

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 この本の担当編集者は高橋香澄さん。もともと週刊SPA!でサブカルチャーを中心に担当していた。ツイッターやフェイスブックで他人の母親の面白メールが流れてくるのを見て、「まとめて本にしたら売れるかも」とひらめいた。

 社内の企画会議に出したところ「ネットでタダで読める」との理由で没に。それでも諦めず、何度も企画を出し続けて「ネットと本では読者層が違います」「まとめて本にすれば読みやすくなります」とアピールした結果、「そこまで言うなら出してみれば」とOKが出た。第一弾の発売は昨年5月の母の日に合わせた。

 タイトルに「おかん」の文字が入っていたことから、まずは大阪で話題に。地元テレビやラジオの取材が相次ぎ、本屋で平積みされるほど人気になり、それが東京へと伝わってきたという。

 ネット上の投稿を集めて出版するには苦労があった。発信者をたどって許諾を得る作業に5人がかりで取り組み、わかりにくい表現には注釈を追加。編集方針としては「下ネタは選ばない」「面白いだけでなくホロッとするいい話も入れる」を掲げた。

 なぜ、こんなにヒットしたのか? 高橋さんはこう見ている。「見返さない、省略する、話がとぶ、思い込みがすごい、いつもご飯を気にしている……といったうっとうしいと思える母親の行動ですが、その根底には愛があふれています。面倒くさいけれど愛すべき存在である母親を、どこか誇りに思いつつ他人に伝えたくなる。そして他人の母親の面白さにも共感する。だからこそ話題になるんだと思います」

 メールを受け取っているスマホ世代の人たちが母親になるころには、こんな面白メールはなくなっているかもしれない。デジタルと悪戦苦闘しながら生み出された母のメールは、今しか楽しめないものだと思うと、少し寂しく思えてくる。

 最後に、子どもを気遣う母からのメールを紹介する。

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「おはよう!帰ってこい!23日クリスマス会する。待っている!ゆっくりしてげ!」

 「はたちの誕生日おめむとう 20年まえの今日、かわいいあなたが生まれてきてくれた感動のきむちを思い出します」

 「ついに60代になってしまいました。思い返せば、30代は小さなあなた方を夢中で見つめていました。40代は、若々しく成長していくあなた方に見とれていました。50代は頼もしく輝いていくあなた方に目を奪われていました。あなた方がみんな素敵(すてき)な伴侶を見つけ、巣立って行ってから迎えた60代は20代の頃に戻ってもう一度お父さんと見つめ合おうと思います」