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 実質2千円の自己負担の寄付で、自治体から返礼の米や肉などが届くことで注目が集まる「ふるさと納税」。税収を上回る寄付を集め、新たな施策を打ち出す自治体がある一方で、減収に危機感を抱く大都市も。今年から控除額が倍になってブームに拍車がかかる中、返礼品競争のあり方も問われている。

東京で「感謝祭」

 十勝平野の北端、北海道上士幌(かみしほろ)町。人口約5千人、牛の飼育数3万4千頭の酪農の町に2014年度、全国から約5万5千件、計約10億円のふるさと納税が寄せられた。前年度の4倍で、町税収入6・4億円を上回った。町企画財政課の関克身主幹は「想定外の勢いに驚いている」と言う。

 人気の秘密は返礼品の和牛。町内の牧場で飼育した最高品質の牛肉で、1万円を寄付すると300グラムがもらえる。空港や駅から遠い同町は元々、和牛など特産品のネット通販に力を入れてきた。町は11年8月から通販サイトをふるさと納税に転用。ほかの自治体が返礼の品ぞろえや受発注に四苦八苦する中、ネット通販で培った多彩な品ぞろえと到着の早さで人気を集めた。

 ふるさと納税専門サイト「ふるさとチョイス」への掲載やネット決済もいち早く採り入れた。関主幹は「スタートダッシュでファンを獲得できたのが成功の理由」と振り返る。

 高齢化と人口減に悩む町は寄付者から使途を指定されなければ寄付金を少子化対策に当てている。13年度分で町立図書館に子供向けアニメなどの最新DVDをそろえ、小中学生を送迎するスクールバスを新調。14年度分で4月に開園した町立認定こども園の幼稚園料金を今後10年無料にした。

 今年2月、町は東京で寄付者約1千人を招き感謝祭を開いた。町の観光案内を見ながら「夏休みに行こうか」と盛り上がる家族連れや、移住の紹介を熱心に聞く人もいた。関主幹は「獲得したファンを離さないようにしたい」と話す。

 東シナ海に面した長崎県平戸市。昨年度にふるさと納税の拡大に取り組み、約14億6千万円を得た。人口は3万人余、住民税額は約11億円だ。

 ウチワエビや平戸牛など豊かな食に恵まれ、返礼品を選ぶ特典カタログには83商品をそろえる。クレジット決済も導入。昨年11月に開いた専用サイトでは、寄付に応じて付与するポイント残高や商品の発送状況を寄付者が確認できる。

 特典の商品価格は寄付額の半分ほど。商品の高額化で目を引く他の自治体とは一線を画す。「高額商品は、まちづくり財源を確保するという制度の趣旨とあわない」との考えからだ。

 市は今年度、寄付金約3億2千万円をコミュニティーバスの維持や小中学生の医療費助成など20事業に充てる。今後は寄付者との交流も進めたいという。担当する市企画財政課の黒瀬啓介・主任主事は「汗をかいた自治体に光が当たる制度。小さくとも生き残れることが実感できた。地方創生は自治体間のサバイバルだ」と話す。

寄付者増え、財源流出

 昼間人口90万人のオフィス街と高級住宅地を抱える東京都港区。11年度に286人だった区民の寄付者は13年度に657人にのぼり、都内の区市町村最多の2億9千万円を寄付。区は1億円の税収を失った。14年度の寄付者はさらに増えて1057人、寄付額は5億3千万円で、1億6千万円の減収を見込む。

 「カタログ競争の状況は当初の趣旨から逸脱している。最大の被害者の港区はどう考えるのか」。3月の区議会予算特別委員会。東日本大震災後、区がふるさと納税を知らせるチラシを納税通知書に同封した経緯に触れながら、区議の一人が区側に詰め寄った。「被災自治体を応援する精神は変わらないが、やみくもに他自治体への寄付を奨励しているわけではない」と、区の担当者は答えた。

 制度が拡充される中、担当者は「今後、減収は5億~6億円になるだろう。無視できる額ではない」と危機感を抱く。15年度の一般会計は1141億円だが、5億円は小学校の給食に区が支出する額に匹敵する。

■換金性高い品、…

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