市民自治による政治の確立を目指した政治学者で法政大名誉教授の松下圭一(まつした・けいいち)さんが6日、心不全で死去した。85歳だった。葬儀は近親者で営んだ。喪主は妻美知子さん。後日、お別れの会を開く予定。

 東大法学部を卒業後、法政大助教授などを経て教授に。西欧政治思想史の研究から出発し、論壇でも早くから活躍した。皇太子(現天皇陛下)の結婚を分析した「大衆天皇制論」(1959年)では、絶対的な天皇のイメージに代わり大衆の支持を基盤にする皇室像が登場したと説き、注目された。

 国家統治型から市民自治による分権型の政治への転換を唱えた著書「シビル・ミニマムの思想」(71年、毎日出版文化賞)では、農村型社会から工業・都市型社会への移行を踏まえた政策論を展開。市民が参加する「地域民主主義」に支えられた自治体が土台になって生活の最低条件が保障されていく、新しい政治像を提示した。革新自治体にかかわる人々の理論的支柱になったほか、後の菅直人元首相らにも影響を与えた。労働、憲法、防衛問題などでも幅広く発言した。日本政治学会理事長、日本公共政策学会会長も務めた。

 朝日新聞では78~79年に「論壇時評」を担当した。

 著書に「現代政治の条件」「市民自治の憲法理論」「社会教育の終焉(しゅうえん)」「政策型思考と政治」、編著に「市民参加」(吉野作造賞)などがある。

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 〈五十嵐敬喜・法政大名誉教授(都市政策)の話〉 松下先生は、憲法前文で「国政は、国民の厳粛な信託によるもの」とあるのは、すべてを官僚にゆだねるのではなく、市民による自治に基づくものだと理論と実践で示してくれた。法学も、法律の「解釈学」ではなく、官僚に対抗して法律をどうつくるかを学ぶ「立法学」でもあると教えてくれた。大学にも、自治体にも、市民の中にも、先生の弟子はたくさんいる。先生の考えを継いで、今の日本の閉塞(へいそく)状況を変えていかないといけない。