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どすこい取材日記

 昨秋、逸ノ城の家族の取材でモンゴルに出張した同僚の波戸健一記者が、土産にポロシャツを買ってきてくれた。左胸に、モンゴル文字が書かれている。夏場所3日目、初めてこのポロシャツを着て取材した。

 横綱土俵入りを終えた直後の東支度部屋に入ると、入り口近くの上がり座敷に陣取る旭天鵬が「お、モンゴルのじゃん」と笑みを浮かべた。胸のモンゴル文字を見せると、「でも俺、読めないからさ」。

 冗談だと思い、「太田さん(旭天鵬の本名)、モンゴル語は得意でしょ」と冗談を言うと、「俺、この文字をほとんど勉強しなかったんだよ」。そして、綱をほどいたばかりの白鵬に声をかけ「これ、何て読むの?」。

 白鵬がポロシャツの文字を指でなぞり、「チンギス・ハーンですね」。すると旭天鵬は、「ということらしいよ」。

 旧ソ連の影響下で社会主義時代のモンゴルでは、ソ連と同じキリル文字しか習わず、モンゴル文字はほとんど習っていなかったという。旭天鵬は「わかんないよ。太田さん、日本人だからさ」。

 この直後、旭天鵬は白鵬から「頑張ってください」と握手を求められた。4日目に、魁皇の持つ史上最多1444回の幕内出場記録に並ぶ。「負けっぱなしで記録達成は嫌だしね」と向かっていった土俵で、旭天鵬にようやく初日が出た。

 千代丸をいっぺんに持っていった会心の相撲に、満面の笑みで「良かったねえ、きょうは」。帰り際、ポロシャツを指さし、にっこり笑って、支度部屋を後にした。(抜井規泰)