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 ニューヨークの国連本部で4月から開かれている核不拡散条約(NPT)再検討会議に合わせ、多くの被爆者が現地入りした。核の非人道性を訴える被爆地の声が、核兵器廃絶をめざす国々の推進力になっているのを実感した。だが、核軍縮の歩みは停滞したまま。核保有国や核の傘の下にいる日本政府の姿勢に不満もうっ積していた。

 「3度目の渡米、これが最後だと思います」。再検討会議のたびにニューヨーク入りしてきた広島県三原市の被爆者、中村澄子さん(81)は国連本部そばで証言した際、こう言った。

 会議は5年に1度開催される。これまで多くの被爆者が海を渡り、戦争で核兵器を使った唯一の国で核兵器廃絶を訴えてきた。

 「今回、日本からたくさんの被爆者が、最後の力を振り絞り、核兵器廃絶を訴えるために、ニューヨークに来ている。被爆者の平均年齢は80歳になろうとしている。彼らに残された時間は多くない。私たちには彼らが生きているうちに核兵器廃絶への道筋を示す責任がある」

 国連本部であったスピーチで、長崎市の田上(たうえ)富久市長は各国政府代表らを前にそう訴えた。高齢化が進む中、被爆者が多く訪れる最後のNPT再検討会議とも言われた。今回ですら体調不良から渡米を見送る被爆者がいた。その一人、広島県原爆被害者団体協議会の坪井直理事長(90)は「翼があれば飛んでいきたい」と悔しがった。

 だが、世界の情勢は被爆地の願いとはほど遠い。「オバマ演説があった後の5年前とは異なり、そうとう厳しい会議になるのは間違いない」と田上市長は語る。

 2010年の前回会議は、米国のオバマ大統領が「核なき世界をめざす」としたプラハ演説の翌年で、米ロは新戦略兵器削減条約(新START)に署名。ブッシュ政権下だった05年の会議で成果がなかった反動もあり、期待感であふれていた。最終文書は核廃絶への行動計画を盛り込み、核兵器禁止条約にも言及した。

 筆者はこの5年前の会議も取材した。核軍縮は再び動き出したものの、被爆者が願う核兵器廃絶の実現にはなお壁があり、不満を感じた。同僚と「半歩前進だ」という趣旨の記事を書いた。

 今思えば、ぜいたくな不満だった。今回は、半歩の前進すら危ぶまれている。ウクライナ危機をめぐるロシアと欧米の緊張が高まり、ロシアのプーチン大統領はクリミア併合時の核兵器の使用準備に言及。被爆者の高齢化がいっそう進む一方で、段階的な核軍縮さえも進んでいないのが現状だ。広島市が会長を務め、世界6675都市が加盟する平和首長会議が「被爆者が生きている間に」と目標にした2020年までの核廃絶は現実的ではないだろう。

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