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 ベトナムで「強さの象徴」「森の友」と愛されているクマが、危機に直面している。狭いおりに閉じ込められ、「伝統薬」の胆汁を注射器で吸い取られたり、飼育放棄で死んだり。哀れなクマを救おうと、市民たちが動き出した。

 ハノイ中心部から西へ約40キロ。幹線道路脇の倉庫のような建物の前に、クマの絵が描かれた看板が立つ。建物の入り口をくぐると、薄暗く、がらんとした部屋の隅に主人らしき中年の女性が座っていた。「胆汁はありますか」と聞くと、奥の通用口に通された。

 扉を開いて外に出る。動物のフンのにおいが鼻をつく。中庭のような場所に、幅1・5メートル、高さ2メートルほどの鉄製のおりがズラリと並び、ツキノワグマとマレーグマ計20頭が飼育されていた。

 体重は100~150キロ。どのクマもあまり元気がない。首を緩慢に左右に振ったり、じっと座り込んだり。女性によると、魚や果物を与えて育てており、半年に1度、注射器で1頭あたり100ccの胆汁を採る。値段は1cc入りの小瓶が3万ドン(約167円)。「お酒に混ぜて飲む。滋養強壮になる、肝臓病や心臓病に効く」と女性は言った。

 胆汁の採取は中国とベトナムでさかんだ。中国でも数千~1万余のクマが同様に飼育されているといわれる。身動きのとれないおりに何年も閉じ込められるうえ、体に針を刺して胆汁をとる際、激痛でもだえ苦しむクマもいるという。

 クマは1992年にワシントン条約で国際取引が規制されている。ベトナムでは同年に狩猟を規制する法律ができ、2006年に政令で胆汁採取も禁じられた。だが飼育は可能で、非合法な胆汁採取と密売が各地で続いてきた。

 女性のもとにはアジア系の外国人や近所の男性らが買いに来る。転売目的でまとめて仕入れていく仲買人もいる。ハノイ中心部の市場では、同じ小瓶が1本8万ドン(約446円)で売られていた。

 ベトナム全土で生息するクマの数は不明だが、主に胆汁採取を目的に、森で捕獲されたり近隣国から持ち込まれたりして飼育されるクマは10年前は4千頭以上いたと言われ、現在は約1400頭(うち約1200頭以上がツキノワグマ)とみられている。胆汁採取のほか、切断したクマの手を酒に浸し、食材や傷の治療薬などとして売っていたケースも発覚している。

108頭が1年間で死亡

 岩や島々の景観が美しい世界遺産ハロン湾を抱えるベトナム東北部クアンニン省。省内で飼育されていた152頭のクマのうち、108頭が1年間で死んだことが1月、地元政府の調査でわかった。飼育放棄で栄養失調や餓死に陥ったことが原因という。

 ハロン湾周辺では長年、世界各地からの観光客を「オプショナルツアー」として民間のクマの飼育小屋に呼び込み、クマの胆汁をひそかに売るビジネスが横行していた。韓国人客が多く、台湾、中国、日本からの客もいたという。

 だが「狭いおりの中でクマに苦…

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