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 4回にわたるPTA企画には、たくさんの意見が寄せられました。最終回の今回は、いただいた疑問や要望に、PTA組織のトップである日本PTA全国協議会(日P)の会長が答えます。PTAは必要なのか、それとも不要なのか。アンケート結果と読者の意見も紹介します。

【絶対必要】

●公立小の元PTA会長。教員は数年ごとに代わり、校風の継続はPTA役員の担う部分が大きい。先生方とPTA執行部が尊敬しあえば学校の雰囲気は良くなり、子供たちにも伝わる。(広島県・40代男性)

●PTAは単なる学校のサポーターではなく地域の基幹組織の一つ。学校をめぐる深刻な問題、つまり地域の「有事」が生じた時、保護者が責任と権能を持って向かい合える自主性・独立性も付与されている。活動のあり方に拘泥した不要論は、市民の貴重な権利を自ら返上する危険な考えだ。(東京都・40代男性)

【必要】

●教育環境改善のために声を上げる時、一保護者の声を取り上げてもらえるか。多数意見を集約する組織は必要だ。(神奈川県・50代女性)

●一般社会と感覚の異なる先生方に異議を伝えられ、モンスターにならずに苦情を言える。保護者の異業種交流の場。(福岡県・40代女性)

●中学校教員。閉鎖的な学校に外部との接点を無理にでも作る意義は大きい。(神奈川県・30代男性)

【あってもよい】

●PTAはあった方がよいが、日Pは子育て世代の代表組織として政治的・社会的に意見表明する役割は終えている。(岩手県・40代男性)

【絶対不要】

●弱者にまで「平等」という鉄拳を振りかざし、PTA仕事を強要しなければならないとしたら、PTAは悪にしかなりません。(群馬県・40代女性)

●参加しなければ保護者の間でいじめが広がり、子どもの関係にまで波及していくような現状をなくすためには、解体が必要だと思います。(奈良県・40代女性)

【不要】

●高校のPTA担当者は、集金装置の末端だといわれています。学校にPTA名義でエアコンを入れてもらっている状況では、任意加入ということは、なかなか確認を徹底できません。一度、現在のPTAを解散し、学校を離れたPTAとして組織化することはできないでしょうか。(群馬県・50代男性)

●究極的には日Pの存在が疑問。会長の出席するイベントや発言も、色々な意見の親がいる中で不適当と思われるものもある。全国の親の代表のような顔で発言されるのはなんで、と思う。(東京都・40代女性)

【なくてもよい】

●「1家庭1仕事」や「1児童1役員」など、役の強制があるから親同士ぎくしゃくする。立候補でしか役や仕事が割り振られなくすればいい。それで成り立たなくなるなら、なくなってもよい。(大阪府・40代女性)

 アンケートに寄せられたPTAへの要望や疑問について、PTAの全国組織のトップである日本PTA全国協議会(日P)の尾上浩一会長に聞きました。

――アンケートにはPTAに対するたくさんの不満が寄せられました。

 「やらされている」という意識が強くなっていると感じます。PTAは、地域の人と一緒に子どもたちを育てる「地域活動」。ゴミ出しや掃除当番などで、みんなが地域のお世話になっている。その分、地域に貢献しようという気持ちがあるかないかが問題です。

――「やらされている」と感じる要因には、共働きの増加など家庭環境や時代の変化があるのでは。

 「共働きだから忙しい」「他にやるべきことがある」という理屈はよく分かりません。私だって仕事をしながら週4日ほどPTAに関わり、妻も働いています。おそらく一番忙しいと思いますが、「地域のため」「子どものため」と思うからやっている。自分の経済活動や自分の子どもだけのためのことばかりしたがるのは残念です。

――共働きだったり忙しかったりしても、言い訳にはならないということですか。

 そうです。例えば、私の子どもが通う小学校は、不審者が入ってこないように、保護者全員が持ち回りで、1日2時間、3交代の門番をしています。一人親家庭は仕事を優先していいことになっていますが、そうではないのに「仕事があるからやりたくない」「なんでやらないといけないのか」という保護者がいました。みんなでずっと続けているからこそ、不審者が一人も入っていないということを分かっていないのです。会社の制服や作業服のままでもいいから、全員に参加するように頼んでいます。

――「PTAは必要か、不要か」というアンケートでは、不要という意見が多くなりました。率直にどう思いますか。

 絶対に必要。

――なんのためにですか

 子どもたちのため。親が自分の子どもだけに関わっていては、いい子には育ちません。帰属意識や規範意識、地域を思う気持ちなど、PTAは人間形成にもってこいの場。そうした意識は、安定した日本の労働力を確保することにもつながります。それを「いらない」なんて、よく言えるなあ。きっと地域とのかかわりが薄いか、何らかのトラブルがあった人たちなのでしょうね。

――会費の使い方に対する疑問の声も多かったです。学校の予算の一部のように扱われているという指摘もありました。

 それはおかしい。変えなければいけませんね。会費はPTA活動のために使うべきです。確かに、学校の予算が足りないことはある。だけど、私は学校の本を買うお金を、地域の企業に寄付してもらいました。普段しっかり活動しているからこそ頼めたのです。地域としっかりした関係を築いているかどうかにかかっています。

――では、会費の使い方を指導しているのですか。

 それぞれのPTAが決めたことに入っていくことはできません。実際、PTA活動以外に使われるケースは、そんなに多くないと思いますよ。PTAのことをよく思っていない人がそう指摘しているのではないでしょうか。

――役員の決め方への不満も根強いです。

 確かに、強制的にやらせるようなよくないやり方も見受けられます。変えることはエネルギーを使うから、同じやり方が続いているのでしょう。それは少しかわいそう。

――役員決めの方法を見直したり、活動をスリム化したりと、各地の会員がPTAの改善に動き出しています。アドバイスはありませんか。

 よく話し合うことが大切。「仲良しクラブ」のように一部の人たちだけで変えようとしても難しい。「この活動は必要だ」という人の意見を聞かずに、「私たちは必要ないと思う」と言っても仕方ありません。それぞれのPTAにそれぞれの事情があるので、日Pとして「こうしなさい」とは言えないけれど、がんばってほしい。

――会員の間に「PTAは入退会自由」という認識が広がってきています。周知する考えはありますか。

 確かに任意加入が原則で、会員と非会員を差別するものではありません。ですが、あえて周知する必要はないと思っています。すべての保護者と教師が、良い教育環境をつくるために集まっている会で、みんなが一緒にやらなければよくならない。「入会」「退会」という考えはそぐわないのです。体を出せない人は、お金を払うことで「参加している」ということになると思います。

――お金を出すだけで許されるのなら、こんなに不満は出ないのではないでしょうか。

 お金の前に、まずは地域との関係をしっかり構築することが大前提です。

――役員を断って陰口を言われたり無視されたり、「大人のいじめ」のようなことも起きています。

 「ちょっとぐらいのこと」としか思わないんですよね。人が集まるところでは、いじめのようなことは起こるものです。そんな時に相談相手や解決方法を探ることも、周囲との関わり方を身につけることになるのではないでしょうか。それも経験。それなのに何かあると「辞める」とか、「あの人が嫌いだから行かない」とか、自分の子どもがやったら注意するようなことを、大人がやってはいけない。

――陰口や無視も気にするな、と。

 断る理由があったら、別に気にする必要はないじゃないですか。

――会員の悩みや不満に対して何かできることはないですか。

 何か手をさしのべてあげたいけれど、数が多すぎて一つひとつは対応できません。不満を減らそうとするのではなく、「一緒にやっていこう」という前向きな意識になるよう努力したい。その第一歩は、日P全国大会などで情報を発信し、意義を理解してもらうことです。

 ――その全国大会など、上部団体からの動員が大変という声もあります。

 全国大会は、活動エリアが地域に限られていた人たちが殻を破るチャンス。全国に情報発信するために、各地に参加をお願いすることはありますが、参加する意義も明確にあるのです。

――日Pの存在意義とは。

 国の教育政策に、保護者として意見できるという役割は大きい。

――「日Pは必要ない」という人もいます。

 それは日Pを知らないからでしょう。しっかり保護者の意見を集約して、日本の子どもの教育環境の底上げをしていきたい。

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 〈おのえ・こういち〉 1964年生まれ。経営コンサルタント。2013年6月から現職。兵庫県PTA協議会会長、中央教育審議会委員も務める。

〈取材班から〉不要の声が多い理由、考えよう

 アンケートに全国から体験談が集まり、PTAの全体像が見えてきました。「仲間との楽しい思い出」といった熱い思いがつづられる一方、不満や苦痛を訴える声も大量に寄せられました。同じテーマについて語っているとは思えないほど、評価は割れています。

 共働きや専業主婦、ひとり親など家庭の多様化、半強制的に参加させられる女性と本部以外の参加を期待されない男性、ピラミッド型組織動員といった問題も浮かんできました。まるで社会の縮図のようです。

 日Pの尾上会長は、自分の理想的なPTAを語っているのかもしれません。しかし、「子どものため」という言葉は、異論を許さない同調圧力を生み出す場合もあります。役員決めで保護者が分断されたり、目的の不明確な行事にかり出されたり。そんな現状をこのままにしていいとは思えません。なぜ「PTAは不要」とする声が多いのか、もう少し耳を澄ますべきではないでしょうか。

 寄せられたご意見の中には、こうした課題に一つ一つ向き合って、改革が進んだ例もありました。一方で、変えることを拒む前例主義と、限られた時間で改革を試みざるを得ない現実が、ぶつかる事例も少なくありませんでした。

 PTAが入退会自由という原則は、知られつつあります。でも実際に退会を選ぶことは簡単ではありません。だからこそ、楽しむ人が増えるようなPTAの形を原点に戻って考える必要があるのではないでしょうか。今回の企画がその一つの手がかりになることを願いつつ、私たちは取材を続けます。

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 このシリーズは杉原里美、田中郁也、田中聡子、畑川剛毅、堀内京子、宮坂麻子が担当しました。

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