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 自然の児(じ)になろうか、また意志の人になろうかと代助(だいすけ)は迷った。彼は彼の主義として、弾力性のない硬張(こわば)った方針の下(もと)に、寒暑にさえすぐ反応を呈する自己を、器械のように束縛するの愚を忌(い)んだ。同時に彼は、彼の生活が、一大断案を受くべき危機に達している事を切(せつ)に自覚した。

 彼は結婚問題について、まあ能(よ)く考えて見ろといわれて帰ったぎり、いまだに、それを本気に考える閑(ひま)を作らなかった。帰った時、まあ今日も虎口(ここう)を逃れてありがたかったと感謝したぎり、放(ほう)り出してしまった。父からはまだ何とも催促されないが、この二、三日はまた青山(あおやま)へ呼び出されそうな気がしてならなかった。代助は固(もと)より呼び出されるまで何も考えずにいる気であった。呼び出されたら、父の顔色と相談の上、また何とか即席に返事を拵(こし)らえる心組(こころぐみ)であった。代助はあながち父を馬鹿にする了見(りょうけん)ではなかった。あらゆる返事は、こういう具合に、相手と自分を商量(しょうりょう)して、臨機に湧(わ)いて来るのが本当だと思っていた。

 もし、三千代(みちよ)に対す…

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