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 けれども、代助の精神は、結婚謝絶と、その謝絶に次いで起るべき、三千代と自分の関係にばかり注(そそ)がれていた。従って、いくら平生の自分に帰って、梅子の相手になるつもりでも、梅子の予期していない、変った音色(ねいろ)が、時々会話の中に、思わず知らず出て来た。

 「代さん、貴方今日はどうかしているのね」としまいに梅子がいった。代助は固(もと)より嫂の言葉を側面へ摺(ず)らして受ける法をいくらでも心得ていた。しかるに、それを遣(や)るのが、軽薄のようで、また面倒なようで、今日は厭(いや)になった。かえって真面目に、どこが変か教えてくれと頼んだ。梅子は代助の問が馬鹿気(ばかげ)ているので妙な顔をした。が、代助が益(ますます)頼むので、ではいって上げましょうと前置(まえおき)をして、代助のどうかしている例を挙げ出した。梅子は勿論(もちろん)わざと真面目を装(よそお)っているものと代助を解釈した。その中に、

 「だって、兄さんが留守がちで…

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