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 川崎市の簡易宿泊所(簡宿)で9人が死亡した火災で、市が周辺の簡宿49棟を調べた結果、全体の約7割にあたる35棟に違法建築の疑いがあることがわかった。「縦割り行政」を解消しようと、情報共有の仕組みを作っていたが機能せず、こうした宿泊施設が長年放置されてきた。

 建築基準法と市条例では、3階建て以上の簡宿は、燃えにくい建材を用いた耐火建築物でなければならないと定めている。火災後の立ち入り検査の結果、耐火建築物でない4層構造以上の簡宿が7棟、火元となった「吉田屋」と同様に、記録上は「2階建て」だが3層構造になっている簡宿が25棟あった。さらに、記録上も実態も3階建ての簡宿が3棟、新たに判明したという。

 これまで消防局は消防法、保健所は旅館業法に基づき、立ち入り検査を実施していた。吉田屋では昨年、防火設備は整い、衛生面でも「問題なし」とされていた。だがいずれも、建物の構造については「建築基準法を所管していない」として、問題視していなかったという。

 川崎市では2006年に発覚した「東横イン」の偽装工事問題を受け、所管する法の枠を超えて情報を共有する「連絡協議会」の仕組みを整えていた。だが、実際にはここに簡宿の構造についての通報はなく、機能していなかったという。

 今回の火災で亡くなった9人は、いずれも吉田屋の2階か3階に滞在していた。3階の床の一部を吹き抜けにした構造について、市は22日の会見で、「火災が起きれば延焼しやすく、避難が困難」との認識を示した。

 一方、市は3階部分がカプセルホテルなどに見られるロフト状の「棚状寝所」という解釈もあり得るとして、「2階建て」とのこれまでの認識を変えていない。また、吉田屋の建築確認申請が1960年に定められた市条例の施行前であることから、直ちに法令違反とは言えないと主張している。

 元東京消防庁職員で公益財団法人「市民防災研究所」の坂口隆夫事務局長は「命に関わることは縦割りではいけない。情報共有できれば惨事を防げたかもしれず、行政には火災の結果責任がある」と話す。(河井健)