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 三千代は玄関から、門野に連れられて、廊下伝いに這入って来た。銘仙(めいせん)の紺絣(こんがすり)に、唐草模様(からくさもよう)の一重帯(ひとえおび)を締めて、この前とはまるで違った服装(なり)をしているので、一目(ひとめ)見た代助には、新らしい感じがした。色は不断の通り好くなかったが、座敷の入口で、代助と顔を合せた時、眼も眉(まゆ)も口もぴたりと活動を中止したように固くなった。敷居に立っている間は、足も動けなくなったとしか受取れなかった。三千代は固より手紙を見た時から、何事をか予期して来た。その予期のうちには恐れと、喜(よろこび)と、心配とがあった。車から降りて、座敷へ案内されるまで、三千代の顔はその予期の色をもって漲(みなぎ)っていた。三千代の表情はそこで、はたと留まった。代助の様子は三千代にそれだけの打衝(ショック)を与えるほどに強烈であった。

 代助は椅子の一つを指さした。三千代は命ぜられた通りに腰を掛けた。代助はその向(むこう)に席を占めた。二人は始めて相対(あいたい)した。しかしやや少時(しばらく)は二人とも、口を開かなかった。

 「何か御用なの」と三千代は漸…

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