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 お店やホテルに入ったら、ロボットに案内された。そんな経験が、これからは増えるでしょう。身の回りでロボットを活用する話が多く聞かれるようになりました。映画やアニメの世界が現実になろうとしています。2030年、人間とロボットはどう共存しているのか。人間とロボットの違いはどこか。まずは、アンケートから探ります。

500回答を集計

 アンケートは5月20日から朝日新聞デジタルで実施しています。今回は30日午後までに寄せられた500回答をまとめました。「こだわりのラーメン店主」「親の介護」「担任の先生」「裁判官」「恋人」「兵士」「外科医」「政治家」について、ロボットに「任せたいか/任せたくないか」「2030年までに実現可能か/不可能か」を尋ねています。微妙な感覚や好みを左右するもの、命や心がかかわるもの、リスクがあり正確さが要るもの、教えたり諭したりする役回り、などを念頭に選択肢を設けました。結果をグラフにしたのが上図です。

 2030年としたのは、作家の瀬名秀明さんと同じ発想です。空想よりは近くにあり、かといって状況をだれもきっちり描けない、そういう時期が15年後だと考えました。

 グラフは、「任せたい/実現可」を+1、「任せたくない/実現不可」を-1として、Y軸、X軸方向に全回答を計算したものです。

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●家事も一緒に

 息子2人は仕事に忙しく離れているし夫との会話は全くなく、友人も少なくなってきた。動物は世話が大変なのでロボットとお話しし、家事も一緒にしたい。(komomo・70歳以上女性)

●トイレまで運んでくれる

 親の介護は終了。将来の自分の介護にぜひ欲しい。ベッドからトイレまで運んでくれる。下の始末は尊厳の課題。夜中でも、遠慮なく頼めるのはロボット以外には考え難い。(PUFFIN・70歳以上女性)

●障害者の自立の手段として

 わたしは障害者だが、自立して地域で生活したい。その手段として、介護はロボットに全面的に任せたい。人に介護されるよりしがらみがなく、自由に時間を使えるから。(ウッキー・50代女性)

●恋人、実現すると思う

 別に子供は欲しくないが、恋愛がしたい。好感が持てる女性には相手にされないが、そうではない女性とは付き合いたいとは思わない。そうすると、恋人の役割をロボットに任せたいし、2030年までに実現すると思う。(おはらっきー・30代男性)

●どうしたって無機質

 ロボットはヒト型にしても可愛らしくしても話ができても、どうしたって無機質な冷たい感じがしてしまい、私は嫌です。ただ、力仕事など人間ではきついことも簡単にできるところは良いところだと思います。(ふぅ・10代女性)

●外科医や教師、任せてもいい

 外科医や教師など今のままの“お客さま対応”のような環境ではロボットに任せるほうが合理的に思えてしまう。(ゆり・10代女性)

●葛藤・心のゆらぎ 理解できる?

 ロボットは冷静に判断できそうですが、人間の葛藤などのゆらぎを、理解することが出来るのでしょうか?(若手のN・30代男性)

●人をサポートする位置づけに

 人間をサポートする位置づけが社会に受け入れられる。裁判で「過去の判例は?」と問えば、容易に回答できそうだし、政治にも利権や私情をはさまずにある程度の判断や法案の問題点・矛盾点を提起できそう。(shinz_y・50代男性)

●依存しすぎないことが大事

 人間より賢く有能になってはダメ。リアルな人格を与え過ぎる、学習能力を持たせ過ぎるのも避けるべきだ。実用的にも、感情的にもロボットに依存し過ぎないことが大事。(sakupi・30代女性)

●ロボットが代替できない人材を

 ロボットに仕事を奪われた人がどこに行くか。社会不安の火種になる危惧がある。ロボットに出来ないことを出来る人材を育てる、教育投資とセットでなければならない。(AirStripOne・20代男性)

●仕事奪われ、競争させられ

 ロボット技術の所有者が一部の持てる者であれば、多くの人がロボットに仕事を奪われて失業するか低賃金でロボットと競争させられ、むごい格差社会が到来するかもしれません。(tsussy・30代男性)

●軍事利用の制限、議論を

 「二足歩行ヒト型ロボット」は人類最大のパートナーとなりうると同時に最大の脅威になる可能性も。軍事利用の制限ルール成立に向けて早急に真剣な議論が必要。(いしばし たたいて わたる・60代男性)

◆アンケートの意見から抜粋。カッコ内はニックネームです。

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作家・瀬名秀明さんに聞く

 2030年を舞台にした小説を書いているところです。再生医療がテーマで、自律型ロボットがテロを起こす話を織り込んでいます。

 15年後というのは、読者は関わりを感じられる一方、専門家はロボットのビジョンを「こうだ」と描けません。小説家として書く余地がある。今の技術に少しアイデアを加えて、こういう未来もあり得るかもね、と。それより先だとまったくの空想の世界になりがちです。

 ヒト型ロボット「アシモ」が出たのが15年前の00年でした。今年の夏ごろに「ペッパー」=図のロボット=が売り出されますが、税抜き20万円弱で、意外と高くない。最近では、百貨店でロボットが受付係を務めました。ロボットが人間の住んでいるところに近づいている感じがします。

 ここから15年というと、さらにロボット像が具体化して、人間に近い領域に入ってくるんでしょうね。考えると、モヤモヤしてきます。

 そもそも人間が本当に人間らしいことをやっている時間って、どのくらいなんでしょう? マニュアル化されている仕事はロボットにやらせればいいという考え方があります。実際、高校生レベルのアルバイトはロボットに置き換わっていくと予測する研究者もいます。

 でも、突発的なことが起こったときの判断は、ロボットにはできません。ハンバーガー店のバイトでも、プライスレスな笑顔を求められる場面が必ずあるはずです。ロボットにはルール作りもできません。将棋の「電王戦」は、人工知能とロボットアームの組み合わせが人間の棋士と対戦しましたが、どうしたらフェアな戦いになるか、おもしろくなるかは人間が考えたわけです。

 15年先となると、ロボットと人間がどう付き合うか、そのルールを作る力がいろんなところでもっと必要になってくると思います。教師ロボットが国語や算数を教えられるようになっているかもしれません。でも、できない子がいたときにクラス全体をどうもっていくか。考えるのは、子どもら人間です。

 先生、兵士、介護……、どれも倫理観が問われます。こういうロボットとどう付き合うかは切実な問題です。人間というもの、社会というものを考えることにつながります。

 2015年の今も、ロボットがどんどん入っている現実があります。今さらやめようと思っても無理。人間とロボット、それぞれの長所をうまく持ち寄って共存関係をつくっていくのが得策です。(聞き手・村上研志)

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 〈せな・ひであき〉 68年生まれ。東北大の大学院在学中に「パラサイト・イヴ」でデビュー。著書に「ロボットとの付き合い方、おしえます。」など。

〈記者の視点〉嘉幡久敬

 ロボットは現実に、私たちの生活に差し迫った問題をつきつけているわけではありません。

 しかし技術は日進月歩です。ロボット開発の現場を取材して感じるのは、「ブレーク間近」という確信です。ロボットが人間のさまざまな生活シーンに現れたとき、どのようにつきあえばいいかを考えることは、早すぎるとは思いません。

 ロボットが人間社会に及ぼす変革はいろいろ考えられます。例えば、優秀なロボットが量産されて、人間の職場を奪う。工場の製造ライン、介護や医療の現場、接客やサービス業、アートの世界……。ロボットに取って代わられることのない、人間の仕事や役割とは何でしょうか。

 ロボット兵士が戦場に投入されたら、戦争のあり方はどう変わるでしょう。ロボット同士が「殺し」合う。そのような代理戦争によって人間が得るものは何でしょうか。

 人間の感情がわかり、対等にコミュニケーションできるロボットは実現するのか。人間の顔そっくりの造作と表情を見せるアンドロイド型のロボットや、かわいがることのできるペット型のロボットはすでに登場し、銀行やデパートの受付、認知症患者の介護の現場などに活用され始めています。人間は将来、そのようなロボットと、友人、恋人といった生身の存在と同等につきあうことができるでしょうか。

 人間とロボットが築く未来を考えることは、人間とは何かを考えることにつながっている。そんな思いから、このテーマに取り組みたいと考えました。

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