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 15年後、ロボットはどんな場面で使われるようになっているでしょうか。みなさんへのアンケートと同じ問いかけを、ロボットの研究や開発にたずさわる方たちにもしました。専門的な知識や経験ゆえでしょうか。より現実的で慎重な意見が目立ちました。みなさんの意見の一部とともに、紹介します。

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 研究者向けアンケートは日本ロボット学会の会員から81回答が寄せられました。朝日新聞デジタルのフォーラムページで実施したアンケート(688回答)と比べると、「担任の先生」「政治家」「恋人」「外科医」「こだわりのラーメン店主」で研究者のほうが「任せたくない」「2030年までに実現しない」の割合が多くなりました。一方、「兵士」では一般向けより「任せたくない」と「実現可能」が多く、「親の介護」では「任せたい」けれど「実現できない」が多くなりました。

 グラフは、「任せたい」「実現可能」という回答を+1、「任せたくない」「実現不可能」を-1として計算。一般向けアンケートと研究者向けそれぞれの合算値を回答数で割り、指数化しました。

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【研究者の見方は】

●擬人化には功罪が

 日本人は擬人化が得意ですので、機械にも心があるかのように接します。それが良い場合と行き過ぎる場合があることも知っておかないといけないように思いますし、ロボットにこだわらないことも大切です。(クライマー・50代男性)

●あくまで賢いパートナーとして

 全ての質問において実現可能かも知れませんが、人間が持つ「知能・知性・感情・愛情・会話」の融合する分野と生命に関わる分野へは、あくまでも賢いパートナー的立場までと限定すべきだと考えます。(Takechan・50代男性)

●平和利用のための枠組みを

 テロリストによる利用、その対抗手段としての軍事利用がエスカレートしそう。平和利用のための倫理的、政治的枠組みも整備する必要がある。(taka・40代男性)

●支配されぬよう監視が必要に

 自律ロボットが自律ロボットを作ったり、AI(人工知能)プログラムがAIプログラムを作ったりしないように監視しなければなりません。そうしなければ、優れたAIを搭載したロボットによって人類が支配されます。(ひつじ・40代男性)

●産官学の連携が悪い

 いまだに、家庭用皿洗いロボットや風呂掃除ロボットができていないのは、産官学の連携が悪いことの表れだと思います。ロボットと人間の役割分担をちゃんとしなければ、ロボットが社会に受け入れられにくくなってしまいます。(ブルーシー・50代男性)

●話しかけるのが普通な世界に

 ロボットがハード、ソフトともに進化すれば、やがて「人間でない相手にもごく自然に話しかけるのが普通」な世界になるでしょう。それは、ある意味では他者への理解や寛容さが発達した世界であると思えます。私は、ロボットの発達が人間の心を解きほぐし、進化させるのではないかと期待しています。(han_a・20代男性)

●いずれ名前が変わる予感

 私は「ロボット」という言葉は「価格の割には大して役に立たないもの」の代名詞と考える。価格に見合って役に立つ素晴らしい機械ができたとき、人はそれをロボットとは呼ばず、別の言葉で呼ぶようになる。(I.N.・40代男性)

●判断の責任はだれが負う

 裁判官や医師、政治家などに求められる「判断」の部分は、2030年までに実用的なレベルになるか疑問です。実現できたとしても、ロボットがした判断に伴う「責任」は誰が負うのか、今から15年では結論は出ないと思います。(KH・40代女性)

●手術室にすでにあふれている

 例えば、ダヴィンチ(手術ロボット)はすでに普及しており、この意味で外科医はすでにロボット化されていると言ってもよい。手術室自体、すでに様々な「ロボット」であふれているというのが私の認識である。自律ロボットを普及させようとすると、「運転手」不在のため、責任、倫理という大きな問題が生じる。(おはようあさひ・40代男性)

◆日本ロボット学会の方々の意見から抜粋。カッコ内はニックネーム。

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【みんなの見方は】

●寂しさ紛らし、優しくなりたい

 毎日近くに住む母と夕食を共にしていますが、正直気分がのらないときもある。ささいなことで母に不愉快な思いをさせてしまう。息子とは会話のない私自身にとっても、寂しさを紛らしてくれるロボットがいたら、そのぶん母に優しく接してあげられるかもしれないと思っています。(オバカオリン・50代女性)

●命はみとれないけれど

 母をみとり、老犬をみとり、娘は独立して、愛情を注ぐ相手がいなくなってしまいました。この年でまた犬を飼う気にはなれません。命を最期までみとる責任を果たす自信がありません。ペッパー(ヒト型ロボット)なら、付き合っていけるのではないかと思っています。(アルカイックスマイル0222・60代女性)

●新たな権力層を生むのでは

 ロボットの製造や、プログラミングに携わる人間が新たな権力層、支配階級になるのではないか?(ロボットフォーザピープル・30代男性)

●ロボットの恋人がいい

 恋人もロボットがいいと思ってしまった。自分でも意外だった。離婚経験者だから、新たな交際、結婚が怖い。相手が実は、すぐ怒る人だったら……、暴力を振るう人だったら……、浮気性の人だったら……。ロボットのほうが、やっぱり……気が楽だ。(みっちゃん・40代女性)

●臨機応変が必要な分野は人間に

 気になるのは判断が必要になった時。ロボットの裁判官や外科医など、臨機応変が利かない。臨機応変が必要な分野は人間に判断してほしい。(ぶぶん・20代女性)

●介護でけがさせないか

 介護するロボットが、人を持ち上げている最中に故障して落としてしまったり、いきなり強い力を出してけがをさせたりしないか心配である。(げんきりんりん・20代女性)

◆朝日新聞デジタルのアンケートの意見から抜粋しました。

日本ロボット学会長・高西淳夫さんに聞く

 ここ20~30年のロボット技術の開発で、表にはみえにくい形のロボット化が進んでいます。一般にイメージするロボットではないけれど、ロボットの技術が使える。たとえばラーメンロボットはヒト型である必要はない。麺をつくり、ゆで、スープとあわせる機械に、顔認識の機能を付ければ、なじみの客を見分けて、好みのラーメンを出せます。

 自動運転カーは車そのものがロボット。兵士もヒト型とは限らない。2030年のロボット兵士の実現可能性を、ロボット学会員の方が高くみているのは、兵士よりロボット兵器をイメージするからだと思います。

 一方で、ヒト型のほうがいい場合もある。福島第一原発の事故現場のように、人が行って操作することを前提とした所は、遠隔操作するヒト型ロボットが適しているでしょう。

 独り暮らしのお年寄りの話し相手をするロボットも、単なる四角い箱じゃなく、目があり、口があり、センサーが聞き取れなかったときは耳に手をあてながら「おばあちゃん、もう一回、言って」と聞き返す。

 介護の現場では、ケアの内容が多岐にわたる。抱きかかえてお風呂に入れる。ベッドと車椅子の間を移動させる。人と直接触れ合う難しい分野ですが、何とか実現したいとエンジニアみんなが考えている。一般の人より、期待度が高め、実現度が低めに出ているのは、難しさと可能性の大きさの両方を知るからでしょう。

 ロボット開発は、人の再発見の繰り返しです。僕自身、ヒト型の開発をしていて、人に近づけようとしているのですが、やればやるほど人が遠くなる。それくらい人はバラエティーにとみ、複雑で高度なんです。

 人そのものを再現できなくても、積み上げてきた技術は活用できる。手術の技能向上や気管挿管のトレーニングのためのロボットなども実用化されています。ここにきて、欧米や中国でもロボットへの注目が高まっていますが、日本の技術力は高い。日本の屋台骨になる産業分野に育っていけばいい、と思います。(聞き手・田中郁也)

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 〈たかにし・あつお〉 56年生まれ。早稲田大学理工学術院教授、同大ヒューマノイド研究所所長。研究テーマは二足歩行ヒト型ロボットなど。

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