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 帰る途中も不愉快で堪(たま)らなかった。この間三千代に逢って以後、味わう事を知った心の平和を、父や嫂の態度で幾分か破壊されたという心持が路々(みちみち)募った。自分は自分の思う通りを父に告げる、父は父の考えを遠慮なく自分に洩(も)らす、それで衝突する、衝突の結果はどうあろうとも潔(いさぎ)よく自分で受ける。これが代助の予期であった。父の仕打(しうち)は彼の予期以外に面白くないものであった。その仕打は父の人格を反射するだけそれだけ多く代助を不愉快にした。

 代助は途(みち)すがら、何を苦んで、父との会見をさまでに急いだものかと思い出した。元来が父の要求に対する自分の返事に過ぎないのだから、便宜はむしろ、これを待ち受ける父の方にあるべきはずであった。その父がわざとらしく自分を避けるようにして、面会を延ばすならば、それは自己の問題を解決する時間が遅くなるという不結果を生ずる外に何も起りようがない。代助は自分の未来に関する主要な部分は、もう既に片付けてしまったつもりでいた。彼は父から時日を指定して呼び出されるまでは、宅(うち)の方の所置をそのままにして放(ほう)って置く事に極(き)めた。

 彼は家に帰った。父に対しては…

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