[PR]

 中二日置いて三千代が来るまで、代助の頭は何らの新しい路(みち)を開拓し得なかった。彼の頭の中には職業の二字が大きな楷書(かいしょ)で焼き付けられていた。それを押し退(の)けると、物質的供給の杜絶(とぜつ)がしきりに踴(おど)り狂った。それが影を隠すと、三千代の未来が凄(すさま)じく荒れた。彼の頭には不安の旋風(つむじ)が吹き込んだ。三つのものが巴(ともえ)の如く瞬時の休みなく回転した。その結果として、彼の周囲が悉(ことごと)く回転しだした。彼は船に乗った人と一般であった。回転する頭と、回転する世界の中に、依然として落ち付いていた。

 青山(あおやま)の宅(うち)からは何の消息もなかった。代助は固(もと)よりそれを予期していなかった。彼は力(つと)めて門野(かどの)を相手にして他愛ない雑談に耽(ふけ)った。門野はこの暑さに自分の身体(からだ)を持ち扱っている位、用のない男であったから、頗(すこぶ)る得意に代助の思う通り口を動かした。それでも話し草臥(くたび)れると、

 「先生、将棋はどうです」など…

有料会員限定記事こちらは有料会員限定記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

有料会員限定記事こちらは有料会員限定記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

有料会員限定記事こちらは有料会員限定記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

有料会員限定記事こちらは有料会員限定記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

980円で月300本まで有料記事を読めるお得なシンプルコースのお申し込みはこちら

こんなニュースも