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 5月22日まで続いた核不拡散条約(NPT)再検討会議は、議論に議論を重ねたものの、その結果をまとめた最終文書案が採択されずに終わった。最終日の最後の全体会合では、冒頭、米国が「中東を非核地帯とするための国際会議」を巡る議論に不満を示して、最終文書案に同意しないことを明言した。全会一致がその瞬間に崩れ、再検討会議全体が決裂した。

 すると、言いたいことを言い終えた国々の代表から、日本も含め、次々と途中で席を立った。目立ったのは、空席か、申し訳なさそうに座る各国の若手外交官ら。その光景を見て、「4月下旬から長々と、いったい何のための会議だったのか」と、思わずため息が出てしまった。再検討会議に先立って取材した際、複数の関係者が「NPT再検討会議は、5年に1度、多くの国々が集まって議論すること自体に意義がある。最終文書案が採択されるのは、いわばボーナスなんだよ」と話していたが、米国の発言で、この「ボーナス」の夢はついえた。「核なき世界」を標榜(ひょうぼう)し、ノーベル平和賞も得たオバマ大統領の政権が、政権最後の2015年NPT再検討会議の決裂に先鞭(せんべん)をつけたのは本当に残念だった。

 それにしても、核保有国の中で、特に歯にきぬ着せぬフランスの発言は、再検討会議全般を通じて強烈だった。「全世界の人口の55%は核の抑止力に依存する国々に住んでいる」と言って、核が「役立つこと」を強調すらした。「大国から中級国家が身を守る唯一の手段は核兵器」とする仏核抑止論を確立した故ガロワ将軍以来の、核へのオブセッション(固定観念)は、今回の再検討会議でもまだ続いているように見えた。フランスは自由や人権などを重視する国というイメージがあるが、こと核に関しては、そのイメージとは異なり、強硬な態度を隠さない。民間シンクタンク「ジュネーブ安全保障政策センター」の研究者で、元仏外交官のマルク・フィノー氏は、筆者の取材に対して、フランスのこうした強硬な態度の背後には、フランスがこれまで自国の利益保護の観点から核軍縮を外部との交渉で行ったことがないという「歴史」がある、と答えた。これは言い換えれば、核については他人の意見を聞かない、という意味にも筆者には思えた。

 以上のような理由も踏まえて、ざっくり総括すれば、2015年NPT再検討会議は、NPT体制に対する市民社会の幻滅をよりいっそう深めた会議だったのではないだろうか。

     ◇

 それでもなお、今回のNPT再検討会議において特筆に値する進歩があった、と筆者は考える。それは、核兵器使用の「非人道性」が会議のメイントピックの一つとなり、世界的な注目を浴びたという事実だ。

 核兵器の非人道性と不使用を訴える共同声明(159の国・地域が賛同)を取りまとめたオーストリアや、「核兵器使用の非人道性」と「核兵器禁止条約の制定」を訴えるニュージーランドなど「新アジェンダ連合」の6カ国が中心となって、その流れを作った。

 最後の最終文書案では、「核兵器の非人道性」に関係する部分が相当削られたとはいえ、それまでの議論が盛り上がったこと自体、ある種の進歩だった。

 では、「核兵器の非人道性」に続く進化した論点は何だろうか。実は、欧州で活躍する日本人研究者が唱える「核兵器の非倫理性」という論点が今、注目を集めつつある。この「核兵器の非倫理性」とは、核保有国が安全保障に役立つとして、その「非人道性」を上回る価値を見いだしていることに対して、仮に核兵器にそのような価値があったとしても「根本的に倫理に反する」という考え方だ。

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