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 テレビ局が本格的にネット配信に動き出している。背景にあるのはテレビ離れ。外資の資金力やネットの双方向性、スマートフォンでも楽しめる自由さに活路を見いだそうとしている。

 世界最大手の動画配信会社ネットフリックス(Netflix)での新番組配信を発表した17日、フジテレビの大多亮常務は「大きなチャンス。ネットフリックスが狙っている年齢層は10~20代。フジテレビが得意とする層と親和性がある」と話した。フジテレビが制作するのは、シェアハウスで同居する若い男女6人の恋愛模様などを追った人気番組「テラスハウス」の新作と、下着メーカーで働く若い女性の成長を描く連続ドラマだ。

 ネットフリックスが急成長したのは、テレビやスマホでいつでも見られる便利さだけでなく、豊富な資金に裏打ちされた独自の制作力もある。ドラマ「ハウス・オブ・カード」は一昨年米テレビ界の優秀作品を選ぶエミー賞を受賞した。大多常務も「世界に通用するコンテンツをネットフリックスと作ってみたい」と期待する。日本でも吉本興業と番組を作ろうとしている。

 ネットフリックスの日本法人のグレッグ・ピーターズ社長は朝日新聞の取材に、番組に世界の視聴者がどう反応したかというデータをフジテレビ側に提供する考えを示した。「番組制作の向上につながるはず」とも語る。

 日本テレビも昨年、定額制動画配信サービス事業に参入した。米動画配信会社Hulu(フールー)の日本事業を買収。運営する日テレの子会社HJホールディングスによると、買収前61万人だった会員は1年で100万人を突破し、さらに増えている。

 名古屋市の会社員小笠原笑夢さん(28)はHuluユーザー。仕事の息抜きにはパソコンで、自宅ではお風呂にスマホを持ち込みアニメなどを楽しむ。「夫と一緒のときはテレビをネットに接続して見ます。見たい時に見たいものが見られるので便利」

 東京都の会社員沢木一真さん(28)は、映画や海外ドラマをHuluでよく見る。「これまではレンタルビデオに行っていたけど、少なくなった。話数の多い海外ドラマは見放題なのでレンタルより得」と話す。テレビは、ほとんど見ないがHuluに配信されているテレビドラマは見るのだという。

 ネットフリックス上陸について、HJホールディングスの船越雅史社長は「市場は成長途上。少ないパイを分け合うなら危機感もあるかもしれないが、ネットフリックスの参入で関心が高まり、定額制動画配信サービスの認知の拡大になることを期待している。しのぎを削って市場を拡大していきたい」と話す。

 テレビ朝日も4月、IT大手サイバーエージェントと合弁で動画配信会社を設立。HuluにはNHKやTBS、テレビ東京など在京キー局すべてが番組を提供している。

 定額制動画配信の国内最大手はNTTドコモが運営する「dTV」だ。視聴可能な約12万作品には、テレビ局の提供も多い。

 テレビ局が番組の配信に積極的な背景の一つがテレビ離れだ。NHK放送文化研究所の調査では、2004年11月は4時間1分だった1日あたりのテレビ視聴時間は10年後、3時間42分になった。番組ごとに課金されるネット配信は各局で取り組んでいるが、利用は伸び悩んでいる。局の枠にとらわれない配信会社への期待は大きい。

 「明日のテレビ」の筆者でテレビやネット配信に詳しい志村一隆さんは「ネット配信は利便性が高く、いずれ、エンタメ系のコンテンツはみなこちらで見るようになるだろう。テレビでは、大きなイベントや報道を生放送で見るというように、役割分担が進む」と話している。(才本淳子、志村亮)

     ◇

 ネットフリックス日本法人のグレッグ・ピーターズ社長と、フジテレビの大多亮常務が17日、朝日新聞のインタビューに応じた。概要は次の通り。

 ――テレビ局と動画配信会社が手を組む意義は?

 ピーターズ インターネットテレビが普及するにつれて、地上波が消えてしまうのではという恐怖心が語られがちだ。しかし、消費者は一方だけあれば満足なのではなく、ネットテレビも地上波も楽しみたい人もいる。いろんなフォーマットが食い合うのではなく、共存することで、コンテンツを見て楽しむマーケットをさらに大きくしていける。

 大多 放送と通信は補完し合いながら、必ず大きなビジネスになる。極東のいちテレビ局がネットフリックスとやることで、(世界で)大きなチャンスをつかもうとしているときに、テレビが食われると言っているようでは、もう夢も何もない。ネット上で新しいもの作ることは、地上波だけでやってきた人間にとって腕試しになる。最後はコンテンツ力の勝負だと思う。

 ――ネットフリックスはなぜフジテレビを選んだのか。

 ピーターズ すばらしいコンテンツを作れること。そして視聴者が自分たちのターゲットと非常に合致した。テレビ離れをしている若い人たちをもう一度、コンテンツで魅了する可能性を強く感じた。

 ――フジテレビがネットフリックスと組むメリットは?

 大多 動画配信事業を拡大しようとすると、コンテンツが充実していく。制作した番組は、ネットフリックスでも、フジテレビオンデマンド(同社の動画・コミック配信サイト)でも、放送でも流れる。一緒に組むことで、自社のコンテンツが流通しやすくなる。

 ――番組をネットフリックスに供給すると、フジテレビはじかに視聴者の動向をつかみにくいのでは?

 大多 逆につかめる。ネットフリックスには宝の山のデータがたくさんある。データの交流ができたら良いという話はしている。

 ピーターズ 日本のコンテンツを見た視聴者のデータのフィードバックは提供するつもりだ。世界の人たちがどう反応したかを知ることができれば、クリエーターも作りがいがある。向上につながるはず。どんな反応がくるかはわからないが、革新する時は、「やってみないと見えないから、とりあえずやろうよ」というところから始まる。(構成・滝沢卓)

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