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 介護が必要となった夫に、長年連れ添った妻が手をあげた。頭によぎったのは、36年前の夫の裏切り。心の奥にしまっていた妻の思いが、暴力に変わった。

 6月18日、東京地裁の422号法廷。黒いカーディガンを羽織った小柄な女(71)が、証言台の前にいた。起訴内容は、当時79歳の夫を殴って死に至らしめた、という傷害致死罪。きゃしゃで品の良さそうな容姿から、そんな犯罪は想像できない。

 事件は昨年7月、東京都目黒区の高級住宅街の一角で起きた。

 検察の冒頭陳述や被告人質問から、事件をたどる。

 被告は約50年前に大手銀行員の夫と結婚。子どもにも恵まれた。病気がちな夫は58歳で早期退職したが、それまでの貯蓄と年金でやりくりし、生活に不自由することはなかった。

 ところが、昨年2月末。胃がんなどの手術をした夫は、退院後に介護が必要な状態になった。身長180センチ近い夫を、151センチ、体重約40キロの被告が支える生活。「あまりに急な介護で、心の準備が追いついてませんでした」。被告はそう打ち明けた。

 そんなとき、36年前の苦い記憶が被告の脳裏をよぎった。

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