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 見ず知らずの男同士が、女性を襲って金を奪うためだけに、ネットを通じて集まった闇サイト殺人事件。卑劣で残虐な手口から、被害者が1人でも死刑判決になった44歳の死刑囚に25日、死刑が執行された。「娘は帰らない。区切りはない」。殺害された女性の母親は悲しみをにじませた。

 「娘をもう一度、抱きしめたいという思いは変わりません」。事件から約8年――。磯谷利恵さん(当時31)の母親の富美子さん(63)は、執行について「突然のことで驚いた」としながら、知らせを聞いて頭に浮かんだのは利恵さんの笑顔だったという。

 事件にかかわった3人の公判では、殺害時の残虐な様子が語られた。磯谷さんの遺族は逮捕直後から極刑を求め続け、33万人以上の署名を集めた。しかし、共犯の2人は無期懲役が確定。「3人に対する憤りはもちろん、国に対して疑問を持ち続けている。被害者の数ではなく、犯行内容を見て裁いて欲しい」と訴える。

 富美子さんは「いつ死刑執行されるのか気にしなくてもよくなったが、娘は帰らない。全てが終わったわけではない。区切りはない」と話す。墓前に、死刑執行を報告するつもりはないという。「本人も遺族も思い出したくないことだから」(杉浦達朗、山本恭介)

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 〈闇サイト殺人事件〉 名古屋市千種区の路上で2007年8月、帰宅途中の会社員磯谷利恵さん(当時31)が男3人に拉致、殺害され、遺体は岐阜県瑞浪市の山林に捨てられた。3人はインターネットサイト上の「闇の職業安定所」を通じて知り合い、犯行に及んだことから、犯罪請負などの情報があふれる「闇サイト」が社会問題となった。名古屋地裁は09年3月、神田司(44)、堀慶末(40)の両被告に死刑、自首した川岸健治被告(48)に無期懲役の判決を言い渡した。3人は判決を不服として控訴したが、神田被告は同年4月に控訴を取り下げたため死刑が確定。残り2人は12年までに無期懲役が確定した。堀被告は、別の男らと愛知県碧南市の夫婦を殺害したとして、12年8月に強盗殺人罪で起訴されている。