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 「沖縄の新聞社はつぶさなあかん」。メディアの存在意義と米軍基地を抱える沖縄の痛みを否定する発言が、自民党の国会議員の勉強会で「講師役」の作家から飛び出した。地元からは、反発の声が上がっている。

 自民党の国会議員の勉強会「文化芸術懇話会」で、作家の百田尚樹氏は、沖縄のメディアへの不満を訴える自民議員に応じる形で、沖縄の主要紙をつぶすべきだと発言した。沖縄本島北部、国頭村の宮城久和村長は「あまりに一方的で乱暴な発言だ」と危機感を示した。

 宮城村長は、かつてNHKで記者経験がある。「基地問題での地元紙の報道は政権に対してかなり手厳しいと感じる」とした上で「主張すら許さずにつぶせ、というのはひどい。メディアが伝える民意を斟酌(しんしゃく)し、あるべき対応を考えるのが、政府や社会に影響力のある人たちが取るべき態度だ」と話した。

 普天間飛行場の名護市辺野古移設をめぐり、仲井真弘多・前知事が一昨年末に辺野古埋め立てを承認したことへの県民の反発が強まった後、名護市長選や知事選、衆院選で自民党の支援する移設容認の候補が立て続けに敗れた。その間、自民党側は沖縄の地元2紙の辺野古移設に反対する論陣に神経をとがらせてきた。党本部の選対や県連の関係者からは「地元マスコミの報道が敗因だ」との恨み節が漏れた。

 本土出身で琉球新報の論説委員長を務めた野里洋・元北陸大客員教授(ジャーナリズム論)は百田氏らの発言の背景について「辺野古への移設が沖縄側の強い反発で思うように進まず、政権やその周辺にいら立ちや焦りが募っているのでは」と指摘する。

 「沖縄の地元紙は県民の民意を背景に、その支持を受けて発行され続けている。地元紙をつぶせ、というのは沖縄の民意の弾圧を意味する危険な発言、発想だ」と警鐘を鳴らす。

「市民をばかにしている」

 「基地の地主たちは大金持ち」「基地の周りが商売になるということで住みだした」――。百田氏は、こうも発言したという。

 普天間飛行場のある宜野湾市の佐喜真(さきま)淳市長は26日、報道陣に対し、発言内容を「確認できていない」とした上で、「地権者は先祖代々の土地に帰りたいのであり、お金目当てというのは極めて遺憾。市民をばかにしている。代表して怒りを表したい」と語った。

 沖縄防衛局によると、沖縄県内の米軍基地と自衛隊施設全体では、2011年度の統計で約4万3千人の軍用地主がいて、年間の地代が100万円未満の人が54%を占める。宜野湾市軍用地等地主会の又吉信一会長は「普天間飛行場の地権者である約3千人の会員がいるが、年収1千万円以上は、ほんの一握り。(発言は)本土の沖縄への誤解が広まりかねない」。

 普天間飛行場の近くに住む上江洲安徳(うえずあんとく)さん(80)=宜野湾市=は、沖縄戦で本島北部へ避難して生き延び、収容所にとどめられた。後に帰ったときには、住んでいた集落は、滑走路に変わっていたという。終戦直後は居住地を自由に選べず、米軍に割り当てられたのは基地のすぐそば。今はそこに姉が住み、自らは近くに土地を買ったという。「土地が少ないから、子どもや孫たちが成長して独立しても基地のすき間の狭い地域に住むしかない事情がある」と語った。

 騒音を知りながら基地の近くに住んでいるのだから自己責任だ――。百田氏のこんな主張も裁判で否定されている。普天間の騒音被害をめぐる訴訟で、福岡高裁那覇支部は10年、判決で「地縁血縁、生活や職業上の理由で、やむを得ず普天間周辺に転居したもので特段非難されるべき事情はない」と述べた。

 百田氏は、沖縄の米兵によるレイプについても「沖縄人自身が起こしたレイプ犯罪の方が率が高い」と言及したとされる。沖縄県女性の翼の会の安次嶺(あしみね)悦子会長(67)は「何を根拠に比較しているのか。たとえ米兵の方が少なかったとしても、基地がなければその分はない。そこに目を向けるべきだ」と批判。県女性団体連絡協議会の伊志嶺雅子会長(71)も「こういう人を講師に呼ぶとは、自民党はどういう勉強をしているのでしょう」と憤った。

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