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視点

 安倍晋三首相に近い自民党議員による勉強会「文化芸術懇話会」(代表=木原稔・党青年局長)で、参加議員や講師として招かれた作家の百田尚樹氏から沖縄をおとしめたり、報道機関を威圧したりするような発言が出ていたことが分かった。与野党双方から批判が上がり、首相は国会で「事実であれば大変遺憾だ」と答弁。ただ、野党から求められた自民党総裁としての謝罪には応じなかった。

 一連の発言の舞台になった「勉強会」は、単なる一政党の私的な会合で講師と国会議員が自由に意見交換したもの、と見逃すことはできない。

 勉強会は自民党本部で開かれ、安倍首相を支持する議員や加藤勝信官房副長官や萩生田光一・総裁特別補佐ら首相側近も出席。講師は首相と共著を出すなど思想的に共鳴し、首相官邸がNHK経営委員に推した百田尚樹氏だった。主催議員の一人は朝日新聞の取材に「安倍さんのやっていることが正しいと発信してもらう。安倍さんを応援する会だ」と明言。実際、百田氏の発言に笑い声は起きたが、たしなめる声は出なかった。百田氏が何を言うかは自由だが、政権を担う国会議員がそれを容認したと受け取られても仕方がない。

 一方、党内では勉強会と同じ25日、安全保障関連法案に反対する識者を招いたリベラル系議員の勉強会も予定されていたが、党執行部の働きかけもあり、中止になった。

 昨年の衆院選の際、自民党がテレビ各局に「公平中立」を求める文書を出したり、4月にはテレビ局幹部を党本部で事情聴取したりしたこともあった。また、今国会では首相自らが審議の場で野党議員にヤジを飛ばすなど、自民党内では、異論を抑え込む一方で自らの正しさだけを声高に叫ぶような空気が強まっているように感じる。勉強会での数々の発言には、こうした党の現状が示されている。

 政権党には、異論があっても謙虚に聞き、説得によってできるだけ多くの人々の合意を形成していく姿勢が求められるはずだ。

 普天間移設をめぐり真剣に向き合うべき「沖縄」をおとしめ、言論の自由を揺るがすかのようにメディアの「懲らしめ方」を議論する――首相はこうした党の現実をどう考えるのか。

 そこにあるのは「政権」という重い権力を担う自覚に欠けた、自民党の姿だ。(西山公隆)

沖縄2紙が共同抗議

 沖縄タイムスと琉球新報は26日、武富和彦、潮平芳和両編集局長名で「百田氏発言をめぐる共同抗議声明」を発表した。声明では「沖縄の2つの新聞はつぶさないといけない」という発言について「政権の意に沿わない報道は許さないという“言論弾圧”の発想そのもの」と批判。米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)と周辺住民にかかわる見解には「沖縄の基地問題をめぐる最たる誤解が自民党内で振りまかれた」として訂正を求める考えを示した。さらに「批判的だからつぶすべきだ―という短絡的な発想は極めて危険であり、いずれ全国のマスコミに向けられる恐れのある危険きわまりないものだ」と指摘し、「今後も言論の自由、表現の自由を弾圧するかのような動きには断固として反対する」と表明した。

他のメディアも抗議声明

 自民党の勉強会での発言を受け、日本新聞労働組合連合(新聞労連)や日本民間放送労働組合連合会(民放労連)は26日、抗議声明を相次いで出した。

 新聞労連は「新聞メディアへの弾圧であり、報道の自由への侵害だ」と指摘。出席議員から政権に批判的な報道機関の規制を求める声が上がったことについて、「憲法軽視も甚だしく、立憲主義国家の国会議員としての識見が問われかねない」と批判した。

 民放労連も「このところ自民党の議員はテレビ局に政治的圧力を頻繁にかけ続けている」として、各放送局に対して「萎縮せずに市民の立場から批判すべきは批判するジャーナリズム精神をさらに発揮するよう求める」と呼びかけた。

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 〈文化芸術懇話会〉 自民党の保守色の強い国会議員が立ち上げた勉強会。設立趣意書では「心を打つ『政策芸術』を立案し実行する知恵と力を習得する」と掲げる。安倍晋三首相の考えに近い保守系の文化人や芸術家を講師に招き、政権への支持を発信することで、幅広い層への支持拡大を目指す。