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 大手機械メーカー・クボタの旧工場(兵庫県尼崎市)周辺で住民被害が発覚した「クボタ・ショック」から29日で10年。老朽化した建物の解体現場で、ずさんな工事によるアスベスト(石綿)の飛散事故が絶えない。石綿を用いた疑いがある建物は、民間だけで推計280万棟。その解体がこれからピークに向かう。五輪を控える東京では他に先駆け解体が進み、周辺住民が石綿を吸うリスクが高まっている。住民被害が対象の石綿健康被害救済法の認定者は今年1万人を超えた。石綿禍に終息の兆しは見えない。

 一昨年秋、関西の住宅に囲まれた町工場を更地にする解体工事があった。請負会社の関係者である男性は、そこにがれきからむき出しになった茶色の吹き付け材を見た。石綿だと直感した。分析機関に持ち込むと、毒性の強い茶石綿(ちゃせきめん)が50%以上の高濃度で含まれていた。

 男性は現場の担当者に経緯を問うた。

 元請けの産廃会社は、作業を下請けに委ねていた。下請け業者は石綿の有無を確認せず解体を始め、重機で天井や壁を壊すと石綿がぼろぼろ落ちてきた。「箝口令(かんこうれい)がしかれた」と担当者は言った。

 すでに建物の半分以上を壊していた。だが報告を受けた産廃会社は手を打たなかった。「万が一、情報知っている人間増やしたら、なんかのことで行政や周辺の耳に入ってしまったら。もう完全に公害ですもん。飛散してもうてるから。会社、もたへん」。現場担当者の説明を男性はICレコーダーで録音していた。

 石綿は「静かな時限爆弾」といわれる。髪の毛の5千分の1という極細の繊維状鉱物を吸い込むと、数十年の潜伏期間を経て石綿特有のがん「中皮腫」や肺がんを引き起こす。

 周辺への飛散を防ぐため、建物解体の際は法令に従って危険箇所を頑丈なプラスチックシートで密閉し、集じん・排気装置を設置する。作業者は防護服と電動ファン付きマスクを着ける。だがこの現場では一切の作業が省かれ、周辺住民には何も知らされなかった。

 石綿含みのがれきは、穀物や土砂の梱包(こんぽう)、搬送にも使う巨大なフレコンバッグ二十数袋分に上った。他の現場から出た石綿と偽り最終処分場に搬出したという。いま現場には、石綿のない建材を用いた真新しい工場が立つ。

 男性は他の解体現場でも同様の飛散事故を見聞きしていた。「放っておけない」。担当者との問答を録音したICレコーダーを記者に差し出した。(足立耕作)

■石綿禍「過去の問題では…

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