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 自民党議員による勉強会で報道機関を威圧する発言が出たことに対し、多くの新聞社が批判の声を上げている。在京5紙が社説で批判的に報じ、ネットで社説を速報した地方紙も。報道の自由が脅かされる事態に対し、各社の危機感がにじむ。

 神奈川新聞は26日午後5時47分、自社のウェブサイトで「速報社説」をアップした。社説は通常翌日の朝刊で掲載され、ネットでは有料会員しか読めない。だが「早く、多くの人に読んでほしい」と、異例の対応に踏み切った。

 社説は「一報道機関として、という以前に民主主義社会の一構成員として看過できない」との書き出しで、異なる意見に耳を貸さない安倍政権の姿勢を批判する。

 執筆した報道部次長兼論説委員の石橋学さんは、「報道を含めて民主主義のあり方がなめられている。自民党の議員は発言をおかしいとも思っていない。普通でないことが起きていると伝えるために、普通ではない対応をした」と話す。速報社説はSNSで急速に広がった。

 今回やり玉に挙げられたのは、ともに米軍基地を抱える沖縄の地方紙だった。自民党は昨年の衆院選前にはテレビ局に文書で「公正中立な報道」を求め、勉強会では「マスコミを懲らしめるには広告料収入をなくせばいい」など報道機関を威圧する発言が相次いだ。社説の速報が地方紙としての政権与党への「対抗策」の一つと考える。「一地方紙だけでどこまで押し戻せるかわからないが、誰かが口火を切れば注目を浴び、全国の地方紙も後に続く。こんな論の広がりもあるのでは」

 ほとんどの在京各紙(東京本社発行の最終版)は勉強会を強く批判した。

 朝日新聞は27日の朝刊で、25日に開かれた勉強会の出席議員らによる発言内容を詳しく伝えた。社説では、安保関連法案をめぐる議論とあわせて「異常な『異論封じ』」とし、「無恥に驚き、発想の貧しさにあきれ、思い上がりに怒りを覚える」と批判した。

 毎日新聞は、「安倍政権になってからメディア規制が強まっていると思うか」という質問に対し、「強まっていると思う」と回答。27日の社説で「言論統制の危険な風潮」との見出しで、「このような風潮を放置すれば、民主主義の基盤がむしばまれてしまう」と警鐘を鳴らした。東京・中日新聞も同日の社説で「報道の自由に対する挑発、挑戦である」と指摘した。東京は29日にも沖縄の地元2紙の両編集局次長の寄稿文を掲載。配信した共同通信の総務局は取材に対し、今回の問題について「異論を許さないという姿勢は、民主主義の根幹にも反することで、重大な問題と受け止めている」とし、「加盟社の関心は高いと思われる」と回答した。

 読売新聞、日本経済新聞は、「『1強』の勢力を持つ自民党の驕(おご)りの表れであり、国会議員としての見識も疑われる」(読売、27日)、「言論には言論で対抗していくのが民主主義」(日経、28日)と指摘する社説を掲載した。産経新聞は29日までに今回の問題を扱った社説を掲載していない。26日朝刊で百田尚樹氏の沖縄2紙への言及のほか、沖縄の米軍基地問題について「根が深い。苦労も苦しみも理解できる」との発言も伝えた。

 多くの地方紙も勉強会に異を唱えた。沖縄タイムスは26日朝刊で「普天間居住 商売目当て」という百田尚樹氏の勉強会での発言を1面の横見出しで掲載。普天間飛行場周辺の土地が強制的に接収された経緯を紹介し、発言を否定した。琉球新報は27日の朝刊1面で「自民 県内2紙に圧力」として、自民党議員の発言を取り上げた。そのほか、「マスコミ批判は筋違い」(北海道新聞)▽「『1強』の堕落 容認できず」(東奥日報)▽「言論を統制するつもりか」(神戸新聞)▽「これが自民党の『本音』か」(西日本新聞)など、報道機関に圧力をかける政権与党の姿勢を社説で批判した。(吉浜織恵、清水大輔)

健全な批判こそ民主主義

 〈水島宏明・法政大教授(ジャーナリズム論)の話〉 今回の自民議員らの発言を民放各局も詳しく扱っている。特定秘密法や集団的自衛権の行使容認などの扱い方に濃淡が見られたのとは対照的だ。新聞を含め「ジャーナリズム全体の危機」との共有意識があるのだろう。政権与党は、「マスコミを懲らしめる」などの発言が党の会合で出たことを深刻に受け止めるべきだ。一方で、「偏向報道」といったメディア批判を素直に受け止める読者・視聴者もいる。健全な批判が民主主義の基盤となることをメディアは粘り強く伝える必要がある。