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 男は、紙に自筆したメモを約20分間、とうとうと読みあげた。

 被告「殺人罪での起訴は断じて容認できない」「私には殺す動機がない」「刺したのではない。単なる事故だ」

 6月23日、東京地裁815号法廷。老眼鏡に補聴器。ジャージー姿の男が、最終陳述で訴えた。問われたのは、妹の夫を刺殺したとされる罪だ。ナイフが刺さったのは偶然の事故だった、と男は主張する。

 その根拠として挙げたのは、自らの珍奇な半生だった。

 東京都杉並区の無職佐藤勉被告(67)。昨年5月26日朝、新宿区の歩道で、自転車に乗っていた義弟(当時68)を走って追いかけ、背後から刃渡り13センチのナイフで腰を刺し、殺害したとされる。検察官は、刺した後も逃げる義弟を追いかけたことや、傷の深さが約12センチだったことなどを根拠に「殺意があったことは明らかだ」と説明した。

 一方、佐藤被告の主張はこうだ。

 その日朝、家賃の保証人になってもらっている義弟と話をするため、義弟の勤務先近くにあるカフェのオープンテラスで待った。すると突然、「大きな黒い影」が右側から迫ってくるのを感じた。

 「刺客だ」。とっさに護身用に持っていたナイフを取り出した。しかし、影は通り過ぎ、かわりに義弟が自転車で通り過ぎるのが目に入った。声をかけて追いかけると、義弟は急ブレーキをかけた。衝突。気づくと、手に持っていたナイフが刺さっていた――。

 黒い影、刺客、護身用ナイフ……。一般の人の生活とはかけ離れた言葉が次々と出てくる。だが、弁護人は「彼のこれまでの半生と当時の生活を考えれば、ごく自然なこと」と訴えた。

 法廷での被告の証言などによる…

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