[PR]

第2章:2

 初日の昼。裁判員に選ばれたばかりの小田篤俊さん(44)たちは、昼食をとるために、みなで東京地方裁判所近くの法曹会館に出かけた。2010年7月末のことだ。

 裁判員6人と補充の2人、裁判官3人の計11人。「名前で呼び合う」という裁判長の提案を受け入れて互いに自己紹介をした後で、雰囲気は和やかだった。ハヤシライスを食べながら、甲子園大会を控えた高校野球の話で盛り上がった。裁判官と裁判員、そして裁判員同士の距離は一気に縮まった。

 戻ってくると、評議室の机の上には、名前が書かれた名札が置かれていた。

 公判は午後からだった。

 3人の裁判官がロッカーから黒い法服を取り出して袖を通し始めた。それを眺めながら、小田さんは何とも割り切れない気持ちに襲われた。

 「あなたたちだけなの?」

 3人の裁判官がそう思っているとは言わないが、「裁判官である自分たちは別、という意識の表れではないか」と感じた。裁判官の黒い法服には「何色にも染まらない」「公平な判断をする」という意味が込められていると言われる。そういう意味があるならなおさら、裁判員にも用意するべきじゃないのか、と思った。

 この日小田さんは、紺色のスーツにネクタイを締めていた。自分が被告人だったら、ひどい格好をした人に裁かれるのはイヤだと感じるだろうと、最低限のマナーとしてスーツを着てきた。裁判員に選ばれた女性たちは「着るものに悩む」と何度も言っていた。

 黒い法服に身を包んだ裁判長たちの後に続いて入廷した。小田さんにとっては生まれて初めての法廷だ。

 入ったとたん、傍聴席に座っていた人たちが一斉に立ち上がった。「すごいところに来てしまったな」

 傍聴席はすべて埋まっているよ…

有料会員限定記事こちらは有料会員限定記事です。

有料会員限定記事こちらは有料会員限定記事です。

有料会員限定記事こちらは有料会員限定記事です。

有料会員限定記事こちらは有料会員限定記事です。

無料会員の方に有料会員限定記事を無料公開しています。 ※一部記事を除く

無料会員に登録いただくと続きをお読みいただけます。すでに無料会員の方はログインして続きをお読みください。

無料会員の方に有料会員限定記事を無料公開しています。 ※一部記事を除く