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 心と体の性別が一致しなかったり、同性を好きになったりする性的少数者の人権について考えてもらおうと、福岡市教育委員会が小学生向けの副読本に性的少数者を扱ったページを設けた。当事者の立場から、元同市立小学校教員の石崎杏理さん(30)が、悩みながら生きてきた子ども時代を振り返る内容だ。

 この副読本は人権読本「ぬくもり」(小学校5、6年生版)。道徳を専門的に研究する教員らが人権を巡る課題などについて執筆し、市教委が発行している。昨年、改訂にあたって性的少数者の人権問題を盛り込むことにし、今春から市立小の道徳の授業などで使われている。

 B5判49ページのうち、性的少数者を取り上げたのは4ページ。石崎さんの体験を人権読本の作成に携わった教員が聞き取るなどして、「ありのままの自分」と題して掲載した。

 石崎さんは、体が女性で心は男性の「トランスジェンダー」。小学校にあがる頃から自分の体に「モヤモヤした違和感」があったという。人権読本では、中学校でセーラー服を着るのが嫌だったことや、無理して女の子らしく振る舞うことで周囲をだましているように感じ、苦しかったことなどが書かれている。

 石崎さんの転機は高校時代に訪れた。友達に悩みを打ち明けると、返ってきた言葉は「本当の、そのままのあなたがすてきだよ」。以来、自分を受け入れられるようになったという。

 昨年夏、掲載を打診され、二つ返事で引き受けた。ひとりで悩む性的少数者の子どもに力を与えたいと考えたことに加え、子どもたちに偏見を持ってほしくないと思った。

 性的少数者はメディアで取り上げられることもあるが、笑いの対象になることも少なくない。石崎さんは「放っておけば偏見が身についてしまう。だからこそ多様な性があることを早く知る必要がある」と話す。

 今は性的少数者の子どもや若者の支援活動をしたり、講演をしたりしている。2013年には一緒に暮らす女性のパートナーを得た。人権読本には2人で撮った記念写真も載っている。

 昨年、配布前の新しい人権読本を使い、試験的に授業をした福岡市立赤坂小の小松原浩教諭(56)によると、子どもからは「(誰かに)受け入れられることが大事」「(体と心の性が違うことは)ありえないことではなく、普通なのだと思った」といった感想が寄せられたという。小松原教諭は「子どもたちは真剣に考えてくれた。学習を積み重ねることで真の理解ができるはずだ」と話す。

 文部科学省は今年4月、性的少数者の児童・生徒に配慮して、人権教育を進めるよう促す通知を出している。GID(性同一性障害)学会理事長で、産婦人科医の中塚幹也・岡山大大学院教授は「性的少数者の人権を取り上げた教材を作る自治体はまだ多くなく、有意義な取り組みだ。小さい子にわかる言葉で伝えられるのなら、小学校高学年より早い段階で教えた方が受け入れやすい」と話す。(山下知子)