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芥川賞に決まって 羽田圭介さん(寄稿)

 小学校五年生の五月から、中学受験のための勉強を始め、塾へ通いだした。塾では毎週日曜、子供たちがテストを受けている間、別室で保護者たちが教科ごとの講師たちによる指導アドバイスを受ける、いってみれば保護者向けの授業があった。

 とある国語講師が、「朝日新聞の天声人語を要約すると、文章能力の基礎力アップにつながる」と母に教えたらしい。その年の夏休みに入ってすぐ、僕は小学校で出される宿題や塾の課題とは別に毎日、「朝日新聞の天声人語の要約」をさせられることとなった。九六年夏のことである。

 数日のうちは、大学ノート上に、写経のように天声人語をほとんどそのまま書き写していた。全然要約できていないではないかと母にさんざん怒られ、苦痛で仕方がなかった。俳優の渥美清さんが亡くなったことについての文章を必死になって要約しようとしたことを、やけに鮮明に覚えている。書き終えたものを母に見せては、容赦のないチェックが入った。やがて半分、三分の一ほどにまでまとめられるようになり、毎日の要約作業が苦ではなくなっていった。

 八月の末、夏休みの終わり頃に…

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