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 日本経済新聞社が英経済紙フィナンシャル・タイムズ(FT)を買収するのは、国内の新聞市場が人口減少に伴い縮んでいるからだ。今後、アジアを中心に国際的なデジタル戦略を加速させるとみられる。日本語という壁が作り出す狭い市場の中でシェア争いをしてきた同業他社は、衝撃を受けている。

 FTは世界のビジネス界で強固な地位を築く。近年はデジタル発信に力を入れている。親会社の英ピアソンによると、過去5年で紙媒体と合わせた購読数は30%増の73万7千部。その7割がデジタルだという。

 FTのデジタル紙面は、世界のメディアの中でも数少ない成功モデルとされている。最大限の情報量を得ようとすると、デジタル版だけでも年間約5万8千円と高額だ。それでも特ダネや出来事の背景説明、有力記者のブログ、コラムニストの解説などを通じて、内幕を描く記事が世界のビジネスリーダーや当局者に支持されている。

 日経は、FTの翻訳記事を電子版に毎日掲載したり、記者を派遣したりするなど、以前から関係が深い。

 FT親会社のピアソンとは、ビジネス英語と時事英語を学べるオンライン英語学習プログラムを共同開発もしている。企業が社員研修に導入する教材に日経やFTの記事をつかった教材を追加するなどビジネス面での連携を深めていた。

 FT買収をめぐっては米ブルームバーグやトムソン・ロイターなども買い手として取りざたされた。そんな中、日経が1600億円の巨費を投じた背景には、国内市場の縮小への危機感がある。

 日本ABC協会の資料によると、日本国内の日刊紙(朝刊)の2014年下半期の総発行部数は3970万部。13年間で15%減った。国内の経済紙では圧倒的な存在感を誇る日経の部数もこの間に11%減り、15年6月時点では273万部だ。電子版の部数は43万人に達しているが、国内だけでは先細りは避けられない状況だった。

 日経はアジアの英語ニュースを強化している。FTは欧米だけでなくアジアにも拠点を構えており、英語で取材して記事を書ける人材を確保できる。日経の関係者によると、社内では数年前にチームを立ち上げ、海外紙の買収を検討していた。

 国内の同業社は衝撃を受けている。大手紙の広報幹部は「状況は厳しい。日経の動きも参考にしたい」。

 英メディアも大きく取り上げた。英BBCは、ピアソンの株価が2・4%上昇したと速報。約60年にわたってFTグループを傘下に置いていたピアソンが北米などでの教育事業を拡大する中で長年、売却の道を探っていると考えられてきたと解説した。

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