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 日本経済新聞社による英経済紙フィナンシャル・タイムズ(FT)の買収について、日本の精密機器メーカー・オリンパスの社長だったマイケル・ウッドフォード氏(英国人)が朝日新聞の取材に答え、「ジャーナリズムにとって悲しいことだ」と語った。

 同氏は、オリンパスの社長として巨額不正経理の疑惑を社内で追及したところ、2011年10月14日、取締役会によって解任された。その日のうちに、FT東京支局のジョナサン・ソーブル記者に資料を渡して疑惑を告発。以後、疑惑はFTなど欧米の新聞で大きく報じられた。

 ウッドフォード氏は日経について「企業と親密で、かつ、企業に頼っている」と批判。「日本企業の不正を暴露したい人は今後、FTには行かないだろう」と述べた。日経新聞は、11月8日にオリンパスが損失隠しを認めるまで疑惑を大きく扱わなかった。ウッドフォード氏は「ソーブル記者に会って数時間のうちにFTが疑惑を報じたのとは対照的に、日経はその後も長く、オリンパスのPR事務所のように行動した」と述べ、「日経は、日本の大企業への批判の先頭には立たない。その観点では日本メディアの中で最悪だ」と批判した。「もし当時、FTが日経に所有されていたら、私は、FTではなく、ニューヨーク・タイムズかウォールストリート・ジャーナルに行っただろう」とも語った。

 買収について企業経営者としてどう見るかと問われると、ウッドフォード氏は「経常利益2400万ポンドのFTに日経は8億4400万ポンドを払う。円が安いときに払い過ぎだと思う。理屈が通らない。また、日本人は、FTのような自由な気風の下で働く西欧人を管理するのが不得意で、それも日経にとっては問題だ」と批評した。

 一方、昨年10月にFTからニューヨーク・タイムズ東京支局に転職したソーブル記者は「日経傘下のFTであってもオリンパスのスキャンダルを報じただろう」とツイート。取材に対して「人員削減がなく、新規の投資もありそうなので、FTが日経に買収されたことは、FTのジャーナリズムの質の観点からもメリットがある。日経を通してFTの報道に介入しようとする日本の権力者がいたときに日経がどう対応するのか、日本に関する報道については少し心配だが、日経はFTを『日経化』しようとは思っていないでしょうから、過度に心配する必要はないと思う」と語った。

 FT自身は25日付の紙面で、ウッドフォード氏が「日経は企業社会・日本から独立しているとは見られていない」と語ったと紹介し、同じ記事の中で、日経の喜多恒雄会長がFTの編集の独立を尊重すると約束したとも報じている。(編集委員・奥山俊宏