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ウォード・ウィルソンさん(BASIC上級フェロー)

 ――著書「核兵器をめぐる五つの神話」で、米国の核抑止論を徹底検証されました。

 「核抑止論を強く信じている少数の人々が米国のシンクタンクや軍にいて、核兵器を絶対に維持し続けなくてはならないと政府を説得してきた。一般の米国人は核兵器が良いものかどうか知らないが、危険なものだとは分かっている」

 ――そうした核抑止論に挑戦しているのですね。

 「核兵器に対する議論のほとんどは、道徳的なものだ。これに対して、実践的で事実に基づいた反論を本に書きたかった。核兵器は決定的だという核抑止論に対して五つの問いを立て、事実に基づいて挑戦した」

 ――米国内の反応はいかがですか。

 「それは読み手による。メッセージはいたってシンプルだ。核兵器の破壊力は大きすぎるし、おびただしい放射能も出すし、扱いにくい。現代の戦争の流れは兵器の小型化なのに、なぜ大きくて扱いにくい兵器を使うのですか、と。一般市民は、これをよく理解してくれる。とても保守的なユタ州でもすぐに理解してもらえた。一方、国防総省や核兵器への戦略的依存が大きい空軍で講演すると、嫌われる。軍人は表だって核抑止論に疑問を呈することはできない。しかし、講演後に個人的に話すと彼らは『おそらく核兵器は将来の抑止力ではない』と言う。ただ、核抑止論を宗教のように信奉している人に納得してもらうのは難しい」

 ――著書によると、原爆は日本と米国の双方にとって、失敗を隠蔽(いんぺい)するのに都合が良かったと説きました。

 「米国にとっては、こうした奇跡の兵器を生み出す起業家や発明家がいて、勝利を呼び込んだのだとして、誇りに思えるし、国のイデオロギーにも合う。日本にとって原爆は、敗戦の理由を説明してくれる。戦い方が悪かったわけではない。敵が想定外の科学的成果を成し遂げた。我々のせいではない。天皇の立場に立てば、終戦と自らの地位の維持を模索する中で、すべては自分の責任だったというのは得策ではなかった」

 「天皇の周辺は、敗戦を原爆のせいにすることにした。それが天皇制存続の最善の道だったからだ。ただ、問題は、原爆によって負けたと日本が言うのを米国も信じてしまったことだ。いくつもの都市への重爆撃を受けても頑迷で降伏を拒んでいた日本が、この奇跡の爆弾によって降伏した、と。そして、核兵器の神話、つまり原爆投下による都市の民間人の殺戮(さつりく)が敵をおじけづかせる、核兵器の破壊力は敵に衝撃を与えるという神話が生まれ、冷戦期から今日に至るまで続いている」

 ――著書によると、広島・長崎への原爆投下は、日本の最高戦争指導会議の六首脳らにあまり影響を与えなかったと。

 「タイミングの問題だ。広島・長崎の前に、米軍は66もの日本の都市を通常爆弾や焼夷(しょうい)弾で爆撃していた。戦後まもなくの米国戦略爆撃調査団のデータによると、こらら計68都市の爆撃による死者数は、3月の東京大空襲が一番多く、広島は2番目だ。破壊面積の広さでは、広島は6番目。破壊された都市面積の割合で見ると、広島は14番目となる。日本の首脳は都市が次々と爆撃されても降伏しなかったので、広島・長崎も爆撃された。違う種類の爆弾が使われたと言っても、都市が爆撃されることは気にしないだろうに、なぜ気が変わって降伏したのだろうか」

 「六首脳の1人、米内光政海相の側近の高木惣吉の日記に最も説得力のある証拠があると思う。米内との会話を記した8月8日の記述によると、広島への原爆投下から2日後、彼らは鈴木貫太郎首相についての冗談をかわしている。米内は広島のことには触れず、自分が心配なのは東京の人々への米の配給についてだと述べたのだ。これは翌日に降伏しようとしている人たちの会話とは思えない。事態が切迫しているとは感じられない。広島原爆は効いていなかったのだ」

 ――20年前の95年、スミソ…

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