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第2章:3

 初日の午後に始まった公判。裁判員として法壇に座っていた小田篤俊さん(44)は汗だくだった。自分でも「どこかで寝てたのか?」と自問するほど、公判でわからないことが多かったからだ。

 暴力団組織の関係者が複数で給料日にある会社の事務員を襲い、約4200万円を強奪したという事件。実行を指示したとされる会社経営の30代後半の男性が被告だった。実行犯の男性はすでに懲役12年の刑が確定していた。

 冒頭陳述を聞きながら、疑問がわいた。「そもそもこの2人はどこで知り合ったのだろう」。事件を主導したとされる被告と実行犯との接点が、小田さんにはわからなかった。

 1日目の公判が終わり、評議室に戻るエレベーターの中で、恐る恐る尋ねた。「僕だけかもしれないが、わからなくて……。あの2人、どこで出会ったんですか?」

 ほかの裁判員たちからも同調する声が上がった。小田さんは胸をなで下ろした。「よかった。みんなわからなかったんだ」。自分が居眠りをしていたのではないとわかり、ほっとした。

 「明日になればわかりますから」と裁判長は言った。

 確かにその通りだった。翌日の公判で、被告の男性と実行犯は、それぞれに別の罪を犯して服役していた刑務所で知り合っていたことが明らかになった。

 疑問は解けたものの、別の思いが小田さんの心に芽生えた。「情報格差がある」。証拠や争点を整理する公判前整理手続きに参加している裁判長はもともと知っていた情報だったのだが、それでも割り切れなさを感じた。

 裁判員にもできるだけ平等に情報は与えられるべきではないのだろうか。あれだけ汗をかき、「寝てたのか?」と自問しながら悩んだことを考えると、そう思わずにはいられない。

 裁判では犯行事実についての争いはなかった。ただ、被告の男性が主犯かどうかが争点になった。

 被告と実行犯の地元は同じ。実…

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