[PR]

第2章:4

 「主文。被告人を懲役8年6カ月に処する」

 2010年7月末の午後、東京地方裁判所の法廷に裁判長の声が響いた。

 給料用の現金を運搬していた会社従業員を殴る蹴るなどして約4200万円を強奪したとして起訴された強盗致傷事件。主犯とされた被告に対して、小田篤俊さん(44)ら裁判員6人と裁判官3人が4日かけて出した結論は、懲役8年6カ月だった。

 検察の求刑は13年。弁護人は6年を主張した。判決は、被告を主犯とは認めず、量刑は結果的に、検察と弁護人の主張のほぼ中間をとる形になった。

 被告の男性は、判決を聞いて、泣き出した。

 主犯でないという主張を認められ、納得している――。小田さんにはそう見えた。「裁判員裁判でよかった」と思ってくれた、と思った。

 評議では、量刑を議論するとき、紙が配られ、自分の意見を書いた。それをホワイトボードに記入。だれがどの意見を書いたかわからない状態で、話し合いを始めた。「もしよかったら意見を」と裁判長が促すと、全員が自分の考えを開陳した。

 公判では被告の情状証人として父親と被告の内縁の妻が出廷していた。父親は永住した中国残留日本人孤児らしく、日本語が不自由だった。たどたどしい様子で証言台に立つ父親の姿は印象に残った。内縁の妻は被告がいないと従業員を抱える会社が回らないと話し、「早く帰ってきてもらいたい」と訴えていた。

 そうしたことも踏まえ、3日にわたる法廷で提示された証拠、証言、やりとりをもとに極めて自由に意見を言い合った。過去の量刑データベースは見なかった。

 8年6カ月という判決は、「社会に復帰して更生してほしい」との思いを込めたつもりだった。

 判決文を読み上げた裁判長は「会社経営者として戻ってくることを私たちは待ち望んでいる」などと、被告に言葉をかけた。

 退廷するとき、小田さんが被告の方に目をやると、被告はずっとこちらを見ていた。「頑張ってほしい」。小田さんは心の中でつぶやいた。

 判決を出し、やり切った高揚感…

有料会員限定記事こちらは有料会員限定記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

有料会員限定記事こちらは有料会員限定記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

有料会員限定記事こちらは有料会員限定記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

有料会員限定記事こちらは有料会員限定記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

980円で月300本まで有料記事を読めるお得なシンプルコースのお申し込みはこちら