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 近代日本を代表する批評家、小林秀雄(1902~83)が戦後まもない時期に発表した「政治家」というエッセーが見つかった。全集に収録されていない文章で、政治や政治家を信頼しすぎることの危うさを指摘する内容だ。

 エッセーは、当時の大臣がふんどし姿で炭鉱を視察するパフォーマンスを披露したことについて「大臣の宣伝術というものは今日でもまだこんな幼稚な拙劣なところをうろついているのだろうか」と批判するくだりから始まる。「民主主義とはぼく等(ら)の自己防衛策である」「民主主義とは人民が天下をとることだなどと馬鹿げたことを考えていると、組織化された政治力は第二の怪物となって諸君を食い殺しかねまい」などと述べ、政治家という存在をむやみにまつりあげることなく、チェックを続けることが必要だと説いている。

 エッセーが掲載されたのは46年に創刊された「九州タイムズ」の47年8月7日付紙面。新潮社刊の全集「小林秀雄全作品」の年譜にも記載がなく、研究者にも存在が知られていなかったとみられる。当時の新聞小説を調べていて発見した大阪大院文学研究科の斎藤理生准教授(日本近代文学)は「戦中から戦後にかけて文章を発表することが少なかった小林が、政治をどのように見ていたのかがうかがい知れて興味深い」と話す。エッセーは7日発売の文芸誌「新潮」9月号に掲載される。(柏崎歓)