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 朝の新宿駅前でサラリーマンを応援する3人のチアリーダーがいる。フリーアナウンサーの朝妻久実さん(31)ら「全日本女子チア部」の部員たちだ。職業は様々でも、行き交う人を元気にしたい気持ちは一緒。駅前は3人のステージだ。

 「きょうここで私たちを見かけたみなさんが、ちょっとだけ勇気を出せる。そんなエネルギーになりたいと思います!!」

 1日朝、大きな声のあいさつを合図に、真っ赤な衣装の3人が軽快な音楽にのって踊り出す。

 「おはようございます」

 「いってらっしゃい」

 足早に通り過ぎる通勤客に笑顔のあいさつ。途中、両手に持った棒で一文字ずつ「ガ」「ン」「バ」「レ」のメッセージを送る。毎週火曜日の7分半。約6年間、形を変えながら続く「朝チア」の光景だ。

 最初は、企画プランナーの斉藤彩さん(38)が2009年、1人で始めた。「『勇気を持って発言すれば、会社のためになると気付いて』と伝えたかったから」。斉藤さんは朝チアを始める2年前、職場になじめず広告会社をやめていた。

 朝妻さんが加わったのは10年から。島根の放送局での契約期間を終え、自信を持って臨んだ東京での採用試験にことごとく落ちたころだった。

 「本当にやりたいこと、何なの」。友人の質問に自然と口に出たのが、大学時代に熱中した「チア」だった。友人が「この人、話題になってるよ」と、斉藤さんのことを教えてくれた。

 物陰に隠れ、初めて見かけた斉藤さんはまぶしかった。すぐに「入部」を決め、当時は月曜から金曜の毎朝、新宿駅前に立った。

 ある日、チアを終えると、中年女性が近づいてきた。「リストラされたの。でも、私も何かやってみようと思う」。3日後、女性は靴磨きの仕事を始めた。

 ネット上で、「自己満足。見てると結構イタイ」と批判されたこともあった。でもその3時間後、「僕は少なくとも元気を頂いている。遠くから、楽しみに通り過ぎています」と書き込みがあった。朝妻さんは言う。「目が合う人は少ないかもしれない。でも、通じている」

 朝チアが約千回を迎えた今年1月、斉藤さんは結婚を機に「引退」。1人で続けていた朝妻さんのもとに3月、看護師の谷田部真理さん(34)と、着ぐるみショーパフォーマーの関谷幸子さん(30)から入部希望の連絡があった。しばらく見学してもらい、朝チア後に近くの公園で3時間、練習を重ねた。

 3人でのデビューは5月。プロバスケットの応援でチア経験がある谷田部さん、「ありのままで何かに挑戦したかった」という関谷さんとの息は、ぴったりだ。

 思わず足を止めた50代の会社員男性は「びっくりしたけど、いいね」。そう言って、地下鉄の駅へ消えていった。(山本亮介