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作家・石田衣良さん

 これからほんとうのことだけを書きます。ぎりぎりに追いこまれた人には、理想や慰(なぐさ)めより真実のほうが救いになることがあるからです。

 日本ではすべての集団でいじめがあります。教室だけでなく、職員室でもPTAでも変わりありません。学校を管轄(かんかつ)する文部科学省でも、教育基本法を審議(しんぎ)する国会でも、いじめはきっとあることでしょう。

 連日いじめキャンペーンを張っているメディアでも変わりません。テレビ局にも新聞社にも出版社にも、いじめは絶対的(ぜったいてき)にある。それを客観的(きゃっかんてき)に認められない人は、記者としての適性を欠くくらいです。

 だれもがいけないといういじめがなくなる気配はありません。あなたは、今日もいじめられるのがわかっている学校にむかわなければならない。とてもつらいことでしょう。ぼくにはなにも、あなたにできません。すごくくやしくて情けないけど、なにもしてあげられないのです。

 ただぼくはあなたが自殺することは禁じます。あなたはあなただけでなく、たくさんの人の思いを受けて生きている。いまのあなただけでなく、未来のあなたにも責任がある。状況(じょうきょう)は厳しいかもしれない。でも、永遠(えいえん)には続かない。

 むかし、ニーチェというおかしな哲学者がいいました。「あなたを殺さないものは、あなたを強くする」。強くなってください。まわりの正しいオトナたちより、もっと大人になってください。死んだふりをして、苦しい時間を生きのびてください。そして、いつか笑いながら光のなかを歩いてください。あなたが生きていることが、きっとだれかの力になる。その日は必ずやってきます。(朝日新聞2006年12月7日掲載)

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