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 中東・アフリカから欧州に渡る難民が急増している問題で、最多の受け入れ希望者を抱えるドイツのメルケル首相は8月31日、ベルリンでの記者会見で、欧州連合(EU)各国が負担を公平に分かち合えなければ、域内の移動の自由を認めた「シェンゲン協定」の見直しも検討課題になるとの考えを示した。

 シェンゲン協定は1985年にルクセンブルクで署名されたのが始まりで、現在は一部を除くEU各国とEU域外のスイスなど計26カ国で実施。加盟国の間で原則、出入国審査なしに自由に国境を越えられ、欧州統合の理念を象徴する規定の一つとされる。

 EUの規則では、難民の審査は最初に上陸した国が責任を持つ。だが実際は、入り口となるギリシャやイタリアが十分に対応できず、難民は国境審査のないEU域内を自由に移動してドイツなどへ向かっているのが現状だ。

 メルケル氏は「欧州全体で動き、各国が責任を分かち合わなければならない」と指摘。「(負担の分担が)実現できなければ、(移動の自由を認めた)シェンゲン協定も課題になるかもしれない」と述べた。

 ドイツは経済が堅調なうえ、シリアなど紛争地出身なら難民として認められる確率が他国より高い。ナチスによるユダヤ人の大量虐殺(ホロコースト)の歴史があり、外国人排斥への反省から、歴代の政権も受け入れに積極的で、難民への手厚い保護政策もある。

 今年のドイツへの難民申請者数は、昨年の4倍に当たる戦後最多の80万人に膨らむ見通し。国内の保護施設は満杯で、難民政策に巨額の税金が費やされることに国民の不満がくすぶる。一方、仕事を奪われるのではないかといった懸念から、難民保護施設への襲撃や放火が続発。難民排斥デモも各地で相次いでいる。

 メルケル氏は「人の尊厳を踏みにじる者を許さない。彼らの心は偏見に満ち、冷たさと憎しみを宿している」と強く批判し、排斥デモに参加しないよう国民に呼びかけた。(玉川透)

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