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野沢武史の目

 南アフリカ戦から中3日の厳しい日程。選手たちに疲労の色は間違いなく見えた。体力が落ちると、脳のスタミナ、判断力が落ちる。ミスが多かったのは、個々の選択のわずかな迷いが重なったためだろう。

 脳のスタミナの低下は、反応速度にも影響を与える。試合前、私はこのスコットランド戦では「トランジション」と呼ばれる攻守入れ替え後の「10秒のマネジメント」が重要だと考えていた。スコットランドは攻守の切り返しからの速攻で活躍できる危険なランナーがそろっている。日本の課題はターンオーバーされた後のタックル成功率。世界ランク1位のニュージーランド代表も重視している数字だ。ここで日本はやられてしまった。

 戦術面に目を向けると、スコットランドは、日本の攻撃は防御の規律さえ守れば怖くない、と思っていたはずだ。反則をしないよう粗いプレーに走らず、密集に人数をかけないで外側まで広く守っていた。外の防御が前に出て、日本の攻撃を内に追い込む作戦がはまっていた。

 こういう時、日本は近場で我慢して攻めなければいけない。だが、SO立川を起点とする「10シェイプ」を多用し、中盤を攻めて捕まっていた。SH田中からFWを当てる「9シェイプ」や密集からすぐに球を持ち出すピックプレーをもっと使えばよかった。

 日本は攻撃の質が悪かったわけではない。何度もゲインラインの裏を取っていた。そのチャンスをいかに得点につなげるか。モールが武器であることも、次戦以降の相手に把握されたはず。分かられた後でモールを押すのは、非常にハードルが高い。

 10月3日のサモア戦は人間性がよく出る試合になる。スコットランド戦は相手に分析された。一方、サモアはやってくることがよく分かる相手だ。幅広のワイド攻撃、才能を生かした攻撃……。サモア戦は立てた作戦を実行に移すのが難しい。コンタクト局面での硬さ、痛さは世界屈指だ。恐怖に立ち向かい、勇気を持って戦えるか。自分よりチームを優先できるか。まさにサモア戦は「人間」が色濃く表れる試合になるはずだ。日本の真価が、問われる。

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 のざわ・たけし 元日本代表フランカー。慶大―神戸製鋼。2008年度に引退後は慶大ヘッドコーチなどを歴任。現在は日本協会リソースコーチ。テレビ解説者としても活躍している。36歳。

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 18日に開幕したラグビーW杯イングランド大会。世界的名将のエディ・ジョーンズ氏率いる日本代表を複数の識者が語り、ラグビーの多様な見方を紹介します。

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