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第3章:2

 2012年1月16日午後、さいたま地裁の一室で裁判員の選任手続きが行われていた。

 抽選で裁判員に選ばれた人の番号が読み上げられていく。佐藤明子さん(50代、仮名)の受付番号は「15」。

 「これが終われば帰れる」。そう思っていた矢先、なんと、2番目に「15」が読み上げられてしまった。

 「なんで、私が……」

 このときは、担当する事件が殺人という大きな事件であることより、翌日から長期間仕事を休まなければならないということの方が気になった。

 選任された裁判員は男性2人、女性4人の計6人。補充裁判員も4人選ばれた。見ず知らずの20代から70代ぐらいの男女が、この日から40日間、裁判官3人とともに事件に向き合うことになった。

 翌17日午前10時、初公判が始まった。

 傍聴席はほぼ満席。その中を、裁判官と並んで一段高い法壇に座った。被告、弁護人、検察官を前にして緊張感が高まった。

 目の前にいる被告の男性は42歳。グレーのスーツに水色のネクタイをしていた。きちんとスーツを着ていることに驚いた。法廷では心証をよくするためにスーツやジャケットを着てくる被告が多いらしい。

 「悪いことしていそうだな」。被告の目つきが悪いように感じ、ついそう思ってしまった。だが、すぐに打ち消した。最初から偏見の目で見てはいけない。「犯人視するのはやめよう。裁判の中で決めていかなくては」。自分に言い聞かせた。

 被告は、いとこと養子縁組をしていた女性(当時46)を殺害して保険金をだまし取り、また、金銭トラブルのあったおじ(同64)も刺殺したとして、2人の殺人と詐欺などの罪に問われていた。養子縁組をして、戸籍上は女性を養母としていたいとこは、被告の4歳下。そのいとこが、この二つの殺人事件の実行犯で、被告がいずれも指示をした主犯とされていた。

 スーツ姿の被告が証言台の前に立った。裁判長から罪状認否を求められると、はっきりとした口調で言った。

 「私は殺していないし、殺そうとしたこともない」

 「わっ、否認! しかも全面否認!!」

 佐藤さんは驚きとともに、「大変なことになった」と思った。

 さらに被告は3600万円の死…

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