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第3章:3

 裁判員に選ばれた佐藤明子さん(50代、仮名)は、2012年1月17日から始まった公判で、懸命に事件と向き合った。神経を集中させて耳を傾け、頭を働かせた。

 被告の男性(裁判当時42)が二つの事件で人を殺害したとされていた。

 ひとつは、いとこ(同38)と共謀して、08年3月に、いとこと養子縁組した女性(事件当時46)に睡眠薬を飲ませてふろ場で溺死(できし)させ、保険金3600万円をだまし取ったとされる事件。もうひとつは、09年8月に、金銭トラブルのあったおじ(同64)の左胸を包丁で刺して殺害したとされる事件だ。このおじは、被告にとっても、いとこにとっても、実のおじにあたる。

 検察側はいずれの殺人もいとこが実行し、被告が指示した、と主張した。だが、法廷に出て来た被告は全面否認。しかも直接証拠はほとんどなかった。

 法廷には、被害者の家族とみられる人たちの姿があった。女性の家族は心から怒り、被告に憎しみを抱いている様子が見てとれた。同じ空間に被告の家族とみられる人たちもいた。

 法壇に座った佐藤さんは最初、彼らの視線をあびているように感じて、体がこわばった。

 「私が殺しました」

 共犯とされるいとこが、検察側の証人として出廷し、そう証言した。

 「え~、はっきり口にしている?!」。少し動揺した。さらに、いとこは「被告が主導した」と証言した。

 「被告に『俺たちの関係はマジンガーZ。俺が頭(操縦者)で、おまえは体だ』と言われた」

 いとこは、被告との主従関係を強調した。

 マンガに登場するキャラクターの「マジンガーZ」。その例えが強烈に心に残った。いとこは真摯(しんし)に素直に話しているように見えた。

 その後、被告の母親、いとこの…

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