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第3章:6

 死刑判決を出してから6日後の12年3月1日。裁判員を務めた埼玉県在住の佐藤明子さん(50代、仮名)の目に、ひとつの新聞記事が飛び込んできた。

 「おじら2人殺害、被告が控訴」

 被告の男性が死刑判決を不服として東京高裁に控訴したという内容だった。

 「やっぱりね」

 驚きはしなかった。男性は裁判では終始、否認していた。判決言い渡しのときも、首をかしげながら聞いていた。不満があることは感じていた。

 でも、「控訴」を突きつけられると、正直なところ、がっかりした気持ちを抑えきれなかった。「罪を認めて、やったことに向き合ってほしい。男性は逃げているのではないか。自分の子どもたちのことを考えてほしいな」と思った。

 夜眠れなくなるぐらい悩んで、出した結論を受け止めてほしいという気持ちが強かった。

 判決当日も「控訴しないでほしい」と思いながら法廷にいた。あれだけ一生懸命考え、悪夢にうなされながらも、全身全霊をかけて取り組んだ。評議の中でも、わからないことは裁判官に何度でも質問した。自分の意見も積極的に言った。真剣に議論し、導き出した結論だったからこそ、当初は、被告がそのまま受け入れることを望んだのだ。

 3月13日。佐藤さんは、交通事故に遭った。さいたま地裁で裁判員を務め、担当した刑事事件で死刑判決を出してから18日後のことだ。

 同居する母親と車で買い物に出かけていた。停車中に後ろから女性の乗ったバイクが突っ込んできて、衝突された。幸い、大きな事故ではなかったが、完全なもらい事故だった。

 急に怖くなった。

 3月13日は、佐藤さんが担当…

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