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 米国ニューヨーク州の片田舎に、かつて地図上にだけ存在した「架空の町」がある。ところがあるとき、架空だったはずの地名を使った民宿が出現。その後、町の名は消えたが、「現代のおとぎ話」に引きつけられる人たちは後を絶たない。

 ニューヨーク市内から北西へ約200キロ。フライフィッシングの釣り場として知られるニューヨーク州ロスコーは、人口500人あまりののどかな田舎町だ。行き交う車もまばらな道を走ると、林や平原の間にぽつりぽつりと民家が並ぶ。道路脇の支柱に小さな看板を見つけた。

 「アグロー(Agloe)へようこそ!」

 アグローは、地図上だけにあった架空の町だ。

 町の図書館長で歴史家でもあるジョイス・コンローさん(74)によると、アグローという地名が地図に現れたのは1925年ごろ。地図製作者のオットー・G・リンドバーグ氏とアーネスト・アルパース氏が、ガソリンスタンドで配布する地図をつくった。このとき、複製されても偽物と分かるように工夫を施した。

 「2人は自分たちの名前の最初の一文字をとって並べ替え、架空の町の名を作ったのです」。そして、地図上でロスコーの一角にアグローの文字を加えた。

 それから数年後。地図出版大手ランド・マクナリー社が作った地図に「アグロー」が記されていた。2人はこれを根拠に「マクナリー社が自分たちの地図を複製した」と同社を提訴しようとした。

 ところが、話は思いがけない方向へ向かう。話し合いの過程でマクナリー社は「アグローという町は実在する」と主張。確かに「アグロー・ロッジ」という民宿が存在していたのだ。30年代のことだった。

 いまも建物が残る「アグロー・…

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